服探し
 
 
 
 店内はさすがというべきか、見た目を裏切ることのない広さと
豪華さを誇っていた。
 店内の把握をしようと周囲にしきりに視線を向けていると何故
か女性と眼が合うことが多いような気がしなくもないが、偶然だ
ろうと思って目が合う都度笑みを返していた。
 大体中央にメインなのだろう普段着に近い服や礼服などを、左
隅のほうに女性物の衣服を、逆に右には男性者の衣服をそして年
齢を考えてなのだろう入り口に近い場所に子供用の服を置いてい
た。さらに細かく判断すると入り口を挟んで右側に子供用の礼
服、左側に靴などを置いておりメインともいうべき中央には男女
両方の礼服やドレス、そこから左右に分かれて左側に女性物の
服、右側に男性物の服が並べられており彼らが探すのはどうやら
右側をメインにすればいいようだった。
「男物は主に右側に置かれてるんだ」
 大体の場所をケルトが説明するように言った。
「クロノスさんはなにか買いたいもの見つかった?」
 大体女性物を見る必要は普通にないので右半分を見終わると入
り口近くで立ち止まったケルトが
2人を見上げて尋ねてきた。
 クロノスはその言葉に先ほど見てきた服の中から好みに合った
ものがあったかと記憶を探るが、実を言えば服を見るよりも回り
の視線が気になって殆ど眼に入っていなかったというのが本音な
ので見つかっていない。
「いえ、もう少し探してみたいです」
 そう答えた。
 ケルトはそのクロノスの答えに困ったような笑みで頷くと、今
度は一気に満面の笑みになると服が並んでいる場所をまるで宝物
を探しにでも行くように指差した。
「わかった! じゃぁ、選びに行こう!」
 嬉々とした口調で2人を見上げて言うケルトにクロノスは軽く苦
笑すると隣に立つボリスにも視線を向けた。
「ボリスさんは? 見つかりました?」
「え…………? あ、いえ、実は服の量に驚いて殆ど見れてなかっ
たんです。それに周りの視線が気になってしまって」
 クロノスからの急な問いに少し戸惑ったように、それでもどこ
かばつが悪そうにそう答えてきたので確かに視線が随分と集まっ
ていたな。と思いながら「あ、やっぱり? 僕もそうだったんで
す」と同意するように胸の前で両手を合わせると苦笑気味にいっ
て、改めてケルトに視線を向けると
「そういえばケルトさんは選ばないんですか?」
 そう尋ねた。
 クロノス自身周りに視線が奪われていてあまり見ていたわけで
はないが記憶が正しければケルトはまったく服を見ていなかった
というと語弊があるかもしれないが、それでも見ていたのは明ら
かにケルトとはサイズの違う大人用の服ばかりだったし、こうい
っては失礼だろうがケルトが着るにしてはその、似合っていない
ものばかりだったように思った。
「え? 僕?
 僕は…………今回は買わない。欲しいのないし」
 クロノスの問いにケルトは少しの間考えるように躊躇った後そ
う返してきたので「そうか」とボリスに対する時と同じように返す
と、考えるように店内を見渡してから改めてボリスを見ると
「なら一緒に探しませんか?
 僕もまだ店の仲良くわかりませんし、一緒に探したほうが効率
もいいような気がしますから」
 そう提案した。
 周りの視線が気になり店内を覚えることが出来なかった以上ケ
ルトについていくのがいいだろうと判断したのと、それに買わな
いと言うのなら一緒に探した方が効率もまだ良いと思ったからだ。
 2人もお互いに視線を向けあうとお互いにお互いを伺うように
首を傾げあった。その様は言っては失礼かもしれないが、まるで
兄弟のようだと思った。
「そうですね。そうしましょうか
 まだ店の中を覚えてないですし、一緒に服も探してもらえると
助かります」
 考えてからそうボリスもクロノスの提案に同意する形で答える
とケルトも納得したのか1つ頷き
「じゃぁ、一緒に行こうか
 欲しい服見付かったらいってね」
 そうクロノスに言うとボリスと彼の腕を引いて服を探しに店の
奥へと消えていったのだった。

  
























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