勘違い
 
 
 
 ケルトと共に服を探すために店内をもう1度みて回っていたが
どうしても気に入ったような服が見つからない。様々な服の場所
を見てみているのだが、どうにも年代的に見ればかなり華奢なほ
うであるクロノスの体に合わないのだ。
(細い細いとは思ってたけど、ショックかもしれない…………。彼
ならそんなこともないんだろうな……………………
)
 自分のいやでも目に入る長い髪をいやそうに後ろに雑にやりな
がらその彼が誰かもわからずに考えていると、1、2歩前を歩い
ていたケルトとボリスが急に足を止めたのでそれに合わせてクロ
ノスも足を止めたのだった。
「どうしたんですか?」
 急に足を止めた2人にそう尋ねてみるが、2人はちょっと考え
込んでいるようで返答が帰ってこない
 店の中なのに何か遇ったのかと思いケルトの隣にたつと、眼に
前にこの店の店員らしき女性が立っていた。
(………………スーツ…………?)
 なにやら記憶のそこのほうにあるような気がする服によく似て
いるそれを着た女性はケルトににこりと笑みを向けて
「いらっしゃいませ、ケルト王太子殿下。
 今日はどのような服をお求めに?」
 そうどうやらケルトが服を買いにきたと判断したらしい相手は
尋ねてきた。
 クロノスはそこでやっとケルトがこの国の王子なのだというこ
とに思い至って、随分と大切なことを忘れていたものだと自分を
責めた。
「いえ、今日は僕ではなくて、彼らの服を買いに来たんです」
 ケルトは女性にそう躊躇わずに女性に告げると、相手も心得た
というようにクロノスとボリスを交互に見て、よりにもよってク
ロノスのほうをまじまじと見つめながら
「そちらのお嬢様にはあちらの服のほうがよろしいのでは?」
 そういってきた。
「おじょ…………っ!! ぼ、僕は男です!!」
 もちろんこの一言に怒ったのはほかでもないクロノス本人であ
る。語尾を荒げながらも店内であることを考慮してかずいぶんと
声を抑えて反論した。
 ただでさえ女顔であることを気にしているのに、はじめてあっ
た人間にそのようなことを言われては反論せずにはいられないと
いうものである。
 もちろんケルトやボリスも同じように思っていただろうが、ま
さか本人がこんなに語尾を荒げていうとは思わなかったのだろう
眼を見開いて驚いたという表情で固まっていた。
「え? あ、申し訳ありませんでした。でもお客様のような方でし
たら男女両用の服装のほうがお似合いになるのではありません
か?」
 クロノスの言葉にすぐに自分の過ちに気がついたらしい店員は
そういうとその服が並べられている場所に3人を案内してくれた。
「こちらでございます」
 そういって示された場所にあった服は確かに女が着ても、男が
着ても別に違和感はなさそうだった。どちらかといえばボーイッ
シュという表現が使われるであろうその服を見てクロノスもここ
で探すという意味の了承で頷くと服を探し始めた。
 ケルトも女性店員に礼を言って服を探し始めると基本的に緑系
の服を示してこれはどうかと尋ねてきた。
 クロノスはその中に何度かスカートとしか言いようのないもの
も混じっているのでそれには苦笑してやんわりと断っておくと、
最終的に深い青紫のハイネックの服に上下を合わせた変わった形
の服を選ぶとそれにした。
「結局女物に近い服になってしまいましたね」
「いいじゃないですか。クロノスさんみたいに綺麗な人はその服に
近い系統の服を好んで着ているんですよ」
 クロノスの自嘲気味な言葉にボリスはすぐにそうフォローを入
れると「じゃぁ、買いに行きますか?」と尋ねてみるが、すぐにケ
ルトにまだボリスさんの服を選んでいないといわれ結局今度はボ
リスの服を選ぶために移動することとなったのだった。

  
























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