アリスの兎!?
 
 
 
 その後もケルトが何かといって代金を渡そうとしていたが、結
局受け取ってもらえそうになかった。
 クロノスもケルトに加勢すべきかと考えたものの、なんとなく
だかこの手のタイプの大人は1度言えば絶対に意見を帰ることは
ないと思ったので、それもためらわれた。
 そんな彼の隣では同じような表情でどうすべきかと考えている
らしいボリスが苦笑していた。
「まぁまぁケルトさん、せっかくのご好意なんですし、ここはお
言葉に甘えることにしましょうよ? ね?」
「で、でも……」
 まるで子供−実際子供だが−をあやすようにいうクロノスにケ
ルトは頬を膨らませ抗議の表情をしたが、そんな表情のケルトを
合えて無視して、店主のほうへと向くと
「あの、ありがとうございました。大切にしますね」
 そう頭を下げて礼を言ったのだった。
 そして困ったようにこちらを見るボリスと、足を踏ん張り抵抗
するまだ何か言いたげなケルトの背を押して離れていった。
 そのまま2、3mも歩いたところで2人の背を押すのが辛く
なってきたのだろう手を離して背を伸ばしたら、仕方のないこと
だが思い切り踏ん張っていたケルトは、手が離れたことで支えを
失いそのまま後ろにすっころんだ……。
「あいたっつ!」
「あわ! ごめんなさい!!」
 勢いのままに転んで頭をぶつけたケルトの声にあわてて謝るク
ロノスに、押されるままに歩いていてこけることのなかったボリ
スは苦笑して2人を眺めていたが何か思ったのか明後日の方へと
視線を向けた。
 そして前のほうへと視線を向けたところで何かに気づいたのか
一気に固まった。
「? どうし……? って、うぅえぇぇ〜〜〜っっっ!!???」
 そのボリスの反応に気づいたケルトがそのまま彼の視線を追う
ように前を見ると其処には、なんと言うべきか前から大量の、懐
中時計を首から提げた兎がこちらから走ってきたのだ。それも1
羽や2羽ではなく、大量に、まるで怒涛のごとく、津波のよう
に……。
「な、何あれーーーーっ!??」
「あわぁ、まるでアリスの兎さんですねぇ〜」
「アリスって何ですかーーーっつ!!!
 慌てるケルトのどこか楽しげに記憶の片隅に残っていた言葉と
映像からそういうと、ボリスはすぐに戻ってきてそう叫んだが、
とりあえず前から走ってくる大量の生き物は間違いなく兎であ
る。それだけは間違いない。
「と、とりあえず捕まえましょうか」
 とりあえず目前まで近付いてきている兎を捕まえるために腕を
伸ばすと、最初に1羽が腕に衝突した。
「包むものがないと辛いですね」
 クロノスと同様に自分も足元を通り過ぎようとした何羽かを
さっと掴み取りながらそう呟いた。隣ではケルトも同様に掴み
取ってはなにやら魔法か何かで作ったらしい丸い器に入れてい
た。
 クロノスはそのことに苦笑しながらもてきぱきと走ってくる兎
を器用に捕まえていき腕に抱きこんでいった。
 そして最後の1羽になったところであわててこちらに走ってく
る人物に気づきその1羽の首根っこを掴みながら立ち上がった。
「この子達は、貴方のですか?」
 首の根っこを掴まれ手から抱き上げられ、今は一応おとなしく
なっている兎を示してそう尋ねると、走り寄ってきた相手は肩で
苦しそうに息をしながらどうにか頷いたのだった。
「つかぬ事をたずねますが、どうしてこんなに沢山、えーと……
脱走したんですか?」
 ボリスが困り気味にそう尋ねると、事の次第は息が整ってから
説明されたのだった。

  
























SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送