甘い香り
 
 
 
 クロノスのどこか子供じみた理由にちょっと苦笑すると、トー
ストにたっぷりの蜂蜜をつけ口に運ぶと至福といわんばかりの笑
みを零した。それを見たクロノスはケルトを見て同じように、と
まではいかないまでも穏やかな笑みを浮かべて見た。そして自分
もそれを頼めばよかったかなぁと思いながら箸を持った。
 そんな風に自分を見ているクロノスの視線に気付いたのかケル
トがそちらを見ると首を傾げてきた。だがクロノスはそのケルト
の反応ににこりと笑って小さく首を振ると自分のじゃがバタに箸
をつけた。
「……? クロノスさん?」
 2人の反応にわけが解からないというように眉を寄せて小さく
首を傾げて声をかけてきた。
 不思議そうに声をかけてくるボリスにも満面の笑みで答えると
小さく切ったじゃがバタを口に運んだ。先程よりは幾分かさめた
それは程よいバターの塩味とジャガイモ特有の味とがうまくあっ
ていてとても食べやすかった。
 クロノスは隣りで至福そうにトーストを食べるケルトをにこや
かに見つめながら自分のものを食べていたがやはりまだ中心は熱
いところもあり、そこを食べてしまったために熱い思いをしてし
まった。
「…………あつぅ。もう少し冷まさないと駄目ですね……。」 
 完全に困ったようにまだ湯気のたつじゃがバタを見てそう溜息
を零すと再び箸を置いた。
 こんなにも熱くてはそうそう猫舌の彼が食べれるものではな
い、それで仕方なくもう少し冷めるまで置いておく事にしたのだ。
 そうして熱いそれを食べる事を暫く諦めたクロノスはある程度
冷めたミルクティーを口に含んだ。紅茶の渋みと砂糖の甘味、そ
してミルクの甘味が混ざり合ってとても飲みやすい口当たりも柔
らかいものだった。その味はあまり紅茶に詳しくないものでもす
ぐにわかるかなり上品なものだった。
(紅茶にはあまり詳しくないですけど、ロイヤルミルクティーと呼
ばれるものでしょうか。
)
 上等なもの特有の味にそう思いながら残りを飲みもう少し欲し
いと思ったが、どうやら頼めば−と言うよりも勝手に−追加で淹
れてもらえるものらしく、空になったカップに気付いた店員が同
じミルクティーを注いでくれた。
 それに礼を言って新たに淹れられたミルクティーに口をつける
と、ミルクティーの優しい甘味に表情を綻ばせた。
「ミルクティー好きなんですか?」
 ゆっくりと飲み干すクロノスに笑いながら尋ねてくるボリス
に、顔を向けてにこりと笑って頷くと。
「ええ、ストレートだと渋みが僕には強すぎるみたいで。」
 そう簡潔に答えて「ボリスさんもミルクティーアデスよね?」と微
かに首を傾げて尋ねると「僕も同じ理由で苦手なんです。」と苦笑せ
いて答えてくれた。クロノスはそのボリスの答えにですよねー。
と言って更に口に含んだのだった。
 ボリスはそのクロノスの笑顔を見ながら内心で(流石に甘いもの
を一緒に頼むときはストレートですけど
)とそっと付け足したの
だった。
 そろそろあれがくる頃ですね? と笑みを引きつらせて手元に
あるミルクティーを見つめながら思った。

  
























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