惹かれ眺める

　半ば引きずられるようにしてついていきながら２人は角を曲がる
ごとに変化する景色を楽しんでいたが、そのためによく足元不注意
でつまずいたりしたのだった。

｢２人とも、大丈夫なの？｣

　流石に３回目にはケルトも心配になりそう声をかけてきたが、２
人は口を合わせるようにして｢大丈夫ですよ。｣と答えたのだった。

　だがその答えにまだどこか不満気なケルトに僅かに苦笑しあった。
余所見をしていた自分達が悪いのだからそんなに気にする必要はな
いと２人は思っているのだ。

　最もそんなことを言ってあっさり承知するような性格でない事も、
重々承知しているのだが。

｢ねぇ、ケルト君。この辺って、町のどのあたりなんですか？　な
んだか家よりお店が多いですね。｣

　このまま話していても押し問答が続くだけで限がないと判断した
のか、ボリスは急ではあったが話題を別のものにする事にしたのだっ
た。

　ケルトは人が好いからこれにもちゃんと答えてくれるだろうと踏
んだのだろう。

｢此処ですか？　此処は商店通りだよ。店や飲食店が中央通の次に
多い場所なんだ。｣

　ほぼボリスの予想通りにその話題に乗ってきたケルトに２人は内
心でそっと安堵の息を漏らしたのだった。

　流石の２人もケルトに不貞腐れるのは避けことだったらしい。

｢服屋とか、色々あるんですね。…………パワーストーン？｣

　ケルトに腕を引かれながら周囲に建ち並ぶ店を物珍しげに見なが
ら呟いた。

唐突に目に入って来た店に何故か強く惹かれたが、今は飲食店に行
く事を優先させるべきと思い、その店は後で行く事にしたのだった。

｢あ、ねぇ、一緒にお昼も食べとこっか。まだ早いけど。｣

　中天にかかりかけた太陽を見てケルトがそう尋ねてきた。

　確かにそろそろお腹も空いてきていたので、それの方が良いなと
思うと、｢そうですね。そうしましょか。｣と答えたのだった。

　ケルトはその答えに満足げに頷くと周りを軽く見て『アクティア』と
書かれた店に入って行った。どうやら此処で休むらしい。クロノスとボ
リスも腕を引かれて店の中に一緒に入っていくと、大きく瞳を見開いた。