再度の目覚め
 
 
 
 そうして椅子の背に体を預けたまま眠っていると、パタパタとい
う足音の後、そっと部屋の戸が開けられた。
「クロノスさん…? アレ?」
 戸を開けてまずベットに視線を向けたケルトは、そこにクロノス
の姿が無いことに首を傾げながら部屋の中に入っていった。
 そして窓際で外を見ていた体勢で椅子の背に体を預けたままの体勢
で眠っているクロノスを見つけ、呆れたように
1つ溜息をついた。
「こんなところで眠っていると、風邪ひくか、こけて怪我しちゃい
ますよ。」
 そういってケルトの横に行き体を軽く揺すった。
 その振動にクロノスは少し身じろぎそっと瞳を開いた。
「ぁ…ケルトさん? おはようございます…。」
 少々寝惚け気味にケルトの姿を確認して挨拶をしてきたクロノス
に、彼はちょっと苦笑してからおはようございます。と返したのだった。
 クロノスは小さく欠伸をしてからケルトのほうへと向き直った。
どうやら完全に眠気は覚めたらしい。
「クロノスさん。何でこんなとこで寝てたんですか?」
 昨日はちゃんとベットで寝てましたよね? とケルトは自分の方
を向いたクロノスに1番気になっていたことを尋ねた。クロノスは
どう説明したものかとしばらく考えていたが、最初から順を追って
話すのが1番という結論に達した。
「実はその、夜明け前に1度起きたんです。
 それでケルトさん言ってたでしょう? 夜明けの街が特に綺麗だっ
て。だから見たいなと思って、日が昇るのをバルコニーで見てたん
です。
 その後部屋に戻ってもう少し外を見てようと思って、椅子をここ
に移動させて街を見てたんです。そしたらだんだん眠くなってし
まって。」
「そのままここで寝ちゃったというわけですね。」
 クロノスの言葉に苦笑しながら言うと彼は少し顔を紅くしてこくり
と頷いた。
 それを見て少し微笑んで見つめてからちょっと怒ったような表情を
作った。
「気持ちはわかりますよ。でも、次からはしないでくださいね。危な
いですから!」
「…クス。はぁい。」
 ケルトの言葉にちょっと笑ってそう返事をした後、ケルトが思いつ
いたように手を叩いて
「そうだ、クロノスさん。街が気になるんですよね。
 だったらこれから朝食食べた後街を見に行きませんか? 案内しま
すよ。」
 と提案したのだった。
 クロノスはその提案に嬉しそうに頷くと、また窓の外を見てケルト
に先ほど眠ってしまう直前まで気になっていた噴水を指差し
「ケルトさん。あそこ! あの噴水の場所に行ってみたいです。」
 といったのだった。
 ケルトもそのクロノスの指差す場所を見ると納得したように頷いた
のだった。
「あの噴水の側って気持ち良いんです。僕も真っ先に案内しようと
思ってたんですよ。」
 そう嬉しそうに言うとクロノスの腕をぐいぐいと引っ張りながら
部屋を出て行った。
「早く朝ご飯食べて、服着替えて、街にいきましょう。」
 クロノスを引っ張りながら楽しそうに言うケルトに彼は同じように
楽しげに笑いながら付いて行った。
「街から見る城ってどんな感じなんでしょうね。きっと綺麗なんで
しょうけど。楽しみです。」
 廊下にある窓から見える城を眺め歩きながら隣りを歩くケルトに
そう、うきうきとした様子で話した。ケルトもそんな彼を見て頷く
と「とっても綺麗ですよ。」と肯定した。
 そしてケルトと廊下を歩きながら窓の外をずっと見ていたクロノス
はいわゆる前方不注意というもので、目の前に近づく柱に気付けな
かった。
「あ、危ない!」
「え? うわった!」
 ケルトの静止の声で危うく難を逃れたが、後少しで正面衝突する
ところだった。
「もー。大丈夫ですかぁ?」
 柱に手をつき、衝突しないように支えた体勢で少し固まっている
クロノスにそう声をかけると、彼はすぐにはっと反応して柱から離れ
て大丈夫です。といって今度は窓をたまにしか見ないようにします。
と恥ずかしそうに頬を掻きながら言ったのだった。
「えと、あの…街にはどんな場所が在るんですか? 噴水以外にも
居心地の良さそうな場所って、やっぱりありますよね。お店もたく
さん見えましたし、…………僕が流れ着いた場所も見てみたい…で
す。記憶が戻る切っ掛けになるかもしれませんし。」
 恥ずかしいところを見られたという羞恥の為か、顔を紅くして捲
くし立てるように言うクロノスをケルトはちょっときょとんとした
表情で見ていたが、そのために足元の注意が反れ、何かに蹴躓いて
よろけてしまった。だがそれでも体勢を立て直すとすぐに頷き、自
慢げにもちろん。と勝気な笑みを浮かべた。
 そして、1つの大きな扉の前で止まった。どうやら辿り着いたら
しい。ケルトはその扉を片手で押し開けると中へとクロノスと共に
入っていったのだった。

  
























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