優しき時間
 
 
 

 そしてしばらくしてベットに寝転がっていても眠気などやってこ
ず困ったように周りを見渡すと、いろいろなデザインのライトスタ
ンドがあり、元来そういうものに興味があったのかそれに引かれて
1番近くにあるライトに手を伸ばして手元に置くと、よく観察する
ように眺めた。色鮮やかに外からの光を反射してまるで光の波の様
でとても綺麗だった。
 ここがどこなのかと言う事はやっぱり、さっぱりと言っていいほ
どわからないが、そのことに関しては考えるだけ無駄のような気が
するので、あえて考えるのをやめる事にした。
 そう思って改めて手の内にあるライトを見るとその全体は空と海
ををちりばめたような蒼が基準になっていて、そのかさの部分も色
鮮やかなステンドグラス風になっており、内側からの光に藍や蒼、
紫が複雑に合わさって美しい色となっていた。
 すると他の照明も見てみたいと言う欲求にかられてベッドから降
りると部屋に数ある照明の1つ1つを手にとって見てみた、さまざ
まな色があるが何故か蒼の色彩が多く、全体的に光が燈っていると
爽やかな印象を受けた。
 その部屋のものを半分以上も見終わったところで後ろの方から
−戸に近いところにいたので隣からの方が近いが。−
「あーっ! 何見てんですかーっっ!!」
 というけるとの叫び声がしてそちらを向くとケルトがスープを
持って立っていた。明らかに、見なくてもわかるほど怒っていた。
「あ…、いや、そ、そのら、ランプを…。綺麗だったので…。」
 焦りきった様子でどもりながら彼は一応の説明をした。焦りす
ぎて言葉が出てこない。
 ケルトは完全にパニックを起こしかけているクロノスを見上げ
ると、手に持っていたランプを取り上げてもとの場所に置き、そ
の手を引いてベッドの場所に連れて行きそこにもう一度寝させた。
「全くもう。退屈なのは一応わかりますけど、曲がりなりにも怪
我人なんですからじっとしててくださいよ。
 まぁ…、バルコニーの柵に座られるよりはましですけど…。」
 と困りきったようなそれでいて悟りきったような疲れきってい
る様にもとれる笑顔で言うとスープとサラダののったトレイを近
くの台に置き、1度外に言って今度はカップとティーポットの乗っ
たトレイを持ってきた。
 そんなケルトの態度にシュンとしたような表情をすると
「すいません。ランプが綺麗だったものでつい…。」
 そう落ちついた口調で謝った。
 相手に対し本当にすまなく思っているらしく素直に謝ってくる
彼に「そういう意味でいったんじゃないんだけどなぁ…。」と心の
中で呟きながら彼は苦笑すると、カップに香りの言い−多分−ハー
ブティーを入れてくれた。
 クロノスはケルトからハーブティーの入ったカップを受け取り、
少し息を吹きかけてからゆっくりと口をつけた。
「おいしい…。すっごくおいしいです。これv
「よかったぁvメリッサのハーブティーなんです。気に入ってもら
えて嬉しいです。」
 素直な賛美の言葉にケルトが心底嬉しそうな笑みで言ってきた。
その、年相応の笑みにクロノスもつられるようにして笑みを浮かべ
た。
 嬉しそうに笑いながらハーブティーを飲み干すとケルトがスープ
の入った皿を手渡してきた。
 「ありがとうございます。」と言って皿を受け取ると、1口食べ
て−? −また「おいしい。」と言ってパクパクと食べていった。
 そしてそのスープを軽く食べきるとケルトに皿を渡して
「すごくおいしかったです。ありがどうございます。
 怪我のほうで随分気を使わせてしまったようで申し訳ありません。」
 と礼と謝罪の言葉を紡いだ。
 そのクロノスの言葉にケルトは慌てたようにて振ると顔を真っ赤
に染めて
「そ、そんな事ないですよっ! 怪我人に気を使うのは当然ですしっ、
それにクロノスさん結構長い間寝てたしっっ。だ、だから、その…
え、えーとっっ。
 そ、そうだ、本っ本読みますか!? 軽い読み物っていう程度の
本があるんですけどっ!」
 と完全にパニックを起こしたような早口でまくし立てるように言
うと部屋の外に走って出ていってしまった。
「…なにもそんなに慌てなくてもいいじゃないですか。」
 少々傷ついたような表情で呟くと、すぐそばの台に置かれたティー
ポットに手を伸ばしカップに少し注いだ。
 人肌程度に冷めたハーブティーは飲みやすくおいしかった。
 蜂蜜が入ってるのかな? とか思いながら飲んでいると外からド
ゴンッという派手な音を立てたあと、少し間を開けてからかちゃり
と思った通り額を赤くしたケルトが本を1冊もってはいってきた。
「あ、クロノスさん。ハーブティー飲んでたんですか?」
「…え? あ、はい。あの、大丈夫なんですか? 額…。」
 ケルトは部屋に入ってきてクロノスを見ていってきたが、彼はそ
れに一応答えつつも困ったように聞きかえした。もっとも平気の1
言ですまされてしまったが。
「はい、これです。」
「あ、ありがとうございます。」
 差し出された本を受け取り1ページ2ページと見てると、横でケ
ルトが自分をじーっと見ている事に気付き気になったので
「あの、僕の顔を見ててなにかあるんですか?」
 と尋ねてみると彼は顔を赤くして「いえ、あの、…えーと…。」
と慌てて弁解しようとしていたが、明確な言葉が出てこなかった。

  
























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