第一話:始まりの瞬間
始まりの会合
 
 
 

「ここは、一体…?」
 周りを見渡してもなにもわからなかった。見覚えがあるようにも
思うし、やっぱりないようにも思うし、やっぱり見覚えがないよう
に思う、わからなかった。
「ここは一体? それに僕は?」
 なにもわからない。そう呟いて彼は頭を抱えてうずくまった。
 なにもわからない。周りは明るいのに、自分の前だけ真っ暗になっ
たようだった。
「あ…。」
 横から聞こえてきた声に驚いてそちらを向くと、年のころは12
3
だろうと思われる少年が戸のところに立っていた。手には水の入っ
た盆を持っていた。看病、していてくれたのだろうか?
「目、覚めたんですね!! よかったぁ。3日も眠る続けていたの
で心配したんですよ。」
 まるで自分のことのように安心した表情で言って近寄ってきた。
手に持った盆を落とさないようにしながら。
「あの、僕は一体…。」
「え? 覚えてないんですか!? あなたはこの町の近くを流れて
いる川の上流から流されてきたんですよ。あの時は本当に驚いたん
ですから。いきなり上のほうから人が流れてきて、何事かと思いま
したよ。その時は近くにいた人にも手伝ってもらってここまで運ん
できたんですから。」
 と、手を大きく動かしてそのときの事を話す少年に彼は微笑まし
いなぁと思って微かに微笑むと
「それは、ご迷惑をおかけしました。」
 そのままの表情で頭を下げた。すると相手の少年は軽く首を横に
振って「そんな事ないですよぅ。」といってきた。心なしか嬉しそ
うだ。そんな彼をみてから。
「あの…、ここは、どこなんですか…?」
 と周りを見渡しながら尋ねた。
 明らかに知らない場所だと、頭のどこかで言っている。だが、なに
も覚えていない所為で確証がないのだが…。
「え? ここですか? ここは『クロス国』の首都『ディスクトー
ル』にある『フィレンス城』の客室ですよ。それがどうかしたんで
すか?」
「…『()』?」
 彼の問いに少年は首を傾げながら答えてきた。
 彼はその中の一言にしばらく間をあけて聞き返した。明らかに驚
いたという表情をしている。
 そんな彼に少年は首を傾げたまま「そうですよ。」といってきた。
彼は自分が場違いな所にいるような気がしてきて頭を抱えたくなった。
「……? ところで名前は? 僕はケツァルコアトル=パプリシア、
知り合いは皆ケルトって呼ぶのでそう呼んで下さい。」
 青年の反応にさらに首を傾げながらそう名乗ってきた。
 青年は一瞬どう名乗ろうか迷った。本当のことを言えば彼は悲しむ
ような気がするから、あまりへたなことは言えなかった。
「え、えーと……僕、僕ですか? 僕、僕は、あの、『クロノス』っ
ていいますっっ。」
 とっさに『クロノス』と青年は名乗ったが記憶がなことには変わり
がないのでこまってしまった。
「クロノスさんって言うんですね。よろしくお願いします。」
「は、はい……。でも、それ以外の事がなんだか曖昧で、よく、思い
……出せないんです。」
 嬉しそうに言うケルトにちょっとだけ罪悪感を感じながらも微妙に
変えた、でも今現在の自分の現状について本当のことを言った。
 その事にケルトは少し悲しそうな表情になったがすぐに笑顔になって
「大丈夫ですよ。きっと、頭を強く打って記憶が曖昧になっているだ
けですよ。だから、早ければ3日か、長くても半年ぐらいで戻ります
よ。って誰かが言ってたのを覚えてます。」
 と励ましてきた。
 どこか無理をしているのが傍から見てもわかった。
―…年下の方に励まされてしまいました……。―
 クロノスは、そう心の中で自分に呆れてしまった。そして年下に励
まされるというのは以外と情けなく感じるものです。と思ったりもし
た。
 そんな風に記憶がないのとは別の意味で彼は落ち込んでしまった。
「どうしたんですか?」
「いえ、何でもいないです。」
 別の意味で落ちこんでしまったクロノスにケルトは不思議そうに尋
ねてきたが、彼はなんとか表上だけでも立ち直って笑顔で否定した。
 そんな彼にケルトはなおも不思議そうな表情をしたがすぐに
「あ、今日は大事を取って休んでてくださいねv絶っ対に!!」
 にこにこと笑いながら言ってくるケルトはただでさえ幼い顔が更に
幼く見えた。それに言ってる事も3日も眠りつづけたことを考えれば
当然だと思ったので、おとなしくしておくことにした。
「わかりました。」
 1つ頷いて答えるとケルトはさらに笑みを明るくした。するとそれ
と同時に少しおなかが空腹を主張してきた。それを聞いて彼は一瞬きょ
とんとした表情になってすぐにクスクス笑うと「何か持ってきますねv」
と言って部屋から出ていった。だが、その直後にズルッ! ベシャッ! 
ゴツンッ! というなんとも素敵な3段階の音がしたが、あえて動かな
い事にした。―怒られてしまいそうだし……。―
 足音が離れていき完全に聞こえなくなると微かに赤い顔を微笑ませて
「すごい音でしたけど、大丈夫なんでしょうか……?」
と微かに呟いたのだった。

  
























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