店内探索

　店内はさすがというべきか、見た目を裏切ることのない広さと
豪華さを誇っていた。

　店内の把握をしようと周囲にしきりに視線を向けていると何故
か女性と眼が合うことが多いような気がしなくもないが、それは
ケルトを見ているのだと先ほどの失態を棚上げにして思うことに
したのだった。

　大体中央にメインなのだろう普段着に近い服や礼服などを、左
隅のほうに女性物の衣服を、逆に右には男性者の衣服をそして年
齢を考えてなのだろう入り口に近い場所に子供用の服を置いてい
た。さらに細かく判断すると入り口を挟んで右側に子供用の礼
服、左側に靴などを置いておりメインともいうべき中央には男女
両方の礼服やドレス、そこから左右に分かれて左側に女性物の
服、右側に男性物の服が並べられており彼らが探すのはどうやら
右側をメインにすればいいようだった。

｢男物は主に右側に置かれているんだ｣

　大体の場所をケルトが説明するように言った。

｢それで火有さんはなにか買いたいもの見つかった？｣

　大体女性物を見る必要は普通にないので右半分を見終わると入
り口近くで立ち止まったケルトが2人を見上げて尋ねてきた。

　火有はその言葉に先ほど見てきた服の中から好みに合ったもの
があったかと記憶を探ると、男性用の礼服が並べられた場所から
は少しばかり離れた場所に確かに気に入ったというか自分好みの
服が並んでいたと思い

｢まぁ、一応、あった｣

　そう答えた。

　ケルトはその火有の答えに満面の笑みで頷くと服が並んでいる
場所をまるで宝物を探しにでも行くように指差した。

｢じゃぁ、選びに行こう！｣

　嬉々とした口調で2人を見上げて言うケルトに火有は軽少し考え
ると隣に立つボリスにも視線を向けた。

｢ちょいまち、ボリスは見つかったのか？｣

｢え…………？　あ、いえ、実は服の量に驚いて殆ど見れてなかっ
たんです。それに周りの視線が気になってしまって｣

　火有からの急な問いに少し戸惑ったように、それでもどこかば
つが悪そうにそう答えてきたので確かに視線が随分と集まってい
たな。と思いながらも｢そうか｣とだけいって改めて今にも歩いて
いきそうなケルトに視線を戻すと

｢ケルトは？　俺欄とこばっか見てた見てーだけど、かわねーの？｣

　そう尋ねた。

　火有の予測が正しければケルトはまったく服を見ていなかった
というと語弊があるかもしれないが、それでも見ていたのは明ら
かにケルトとはサイズの違う大人用の服だったし、言っては悪い
かもしれないが、サイズを合わせたとしても絶対に似合わないよ
うな黒や赤系統の服ばかりだったような気がする。ケルトに合う
服は青や白系だと火有は思っているのでその系統を買うといった
ら全力でとめるつもりでいる。

｢え？　僕？

　僕は…………今回は買わない。欲しいのないし｣

　火有の問いにケルトは少しの間考えるように躊躇った後そう返
してきたので｢そうか｣ととめる必要がないと安堵のため息と共に
呟いて、考えるように店内を見渡してから改めてボリスを見ると

｢ならボリスとケルトは一緒に服を探したほうがいいんじゃね？

　俺は大体場所も覚えたし、ほしい服もすぐに決めれそうだから
まだ決まってないボリスともういっぺん服を探してこいよ。そっ
ちのほうが早いと思うしそれでもまだ決まってなかったら俺も一
緒に探すしな｣

　そう提案した。

　周りの視線が気になり店内を覚えることが出来なかったボリス
にケルトがついていくのがいいだろうと判断したのと、それに買
わないと言うのなら一緒に探した方が効率もまだ良いと思ったか
らだ。

　２人もお互いに視線を向けあうとお互いにお互いを伺うように
首を傾げあった。その様は言っては失礼かもしれないが、まるで
兄弟のようだと思った。

｢そうですね。そうしましょうか

　まだ店の中を覚えてないですし、一緒に服も探してもらえると
助かります｣

　考えてからそうボリスも火有の提案に同意する形で答えるとケ
ルトも納得したのか１つ頷き

｢じゃぁ、ばらばらに行こうか

　欲しい服見付かったら合流してね｣

　そう火有に言うとボリスの腕を引いて服を探しに店の奥へと消
えていった。

　火有もその後ろ姿を見送ってから自分の服を探しに同様に店の
奥へと向かったのだった。