瞳の色
 
 
 
 何故か刻兎の服も買うことになってしまい普通の服屋にそんな
ものが置いているのかと一瞬疑問に思いながらも、そこはそれ異
世界だからなんでもありと思うことにして疑問は口にしなかっ
た。普通は置いていないと思われるのだが……。
 刻兎となにやらまだ格闘しているケルトについては自業自得だ
からとあえて無視することにした。冷たいかもしれないがこれも
親切である、この程度のこと自分で解決しないとろくな大人にな
らないだろうから。
 そしてやや後ろのほうをついて歩くボリスのほうを見てその規
定いる服を見た。
 その第一印象ははっきり言ってしまえば部屋着。よくて私服と
いったところだろうその服はなにやらあんな場所で発見された割
には、まるで家の中から落ちたような感じすらするものだった。
「あの、やっぱり僕の服も……?」
「買うよ? 何で?」
 恐る恐るとった感じで尋ねてくるボリスの言葉にケルトはあっ
さりと最後まで言わせることなく答えてきて、その表所は何当た
り前のことを聞いてるのだとでも言わんばかりに不思議そうだっ
た。
 だがその答えにボリスは複雑そうに表情をゆがめたところを見
ると、どうやらケルトに買ってもらうということが気になるらし
い。
「まぁ、そんなパジャマみたいな格好でこれから歩き続けるわけ
にゃかんだろ」
 納得させようと思いそういってみたがもしかしたら言葉を選び
損ねたかもしれない、一気に落ち込んでしまった。
 しまったとは思うものの言ってしまった言葉は取り戻せないの
で後の祭りとでも言うのだろうか、とりあえずこうなったら自分
で浮上してもらうしかないとさじを早々に投げたのだった。
「何でそんな複雑そうな表情するかなぁ」
 ケルトも同様に複雑そうに表情をゆがめるボリスを見てばつが
悪そうな苦笑いを見せてそう呟くが、その声は問題の青年には届
くことなく虚空に消えて知った。
「まぁ、これからのことを考えれば服は必要ですし、いいです
か……」
 少しの間を空けてボリスは何か吹っ切れたように顔を上げると
そう呟いた。どうやら問題は自己完結したらしい。
「誰かが時には居直りも必要といってましたしっ」
 それが自己完結の理由らしい。変わった理由だとは誰もが思う
が本人が納得しているのならばそれでいいかということで、
2人も
特に何も言わなかったのだった。
 そうやって何を話すでもなく歩いているとふと気がついたよう
に火有がボリスの間を正面から覗き込んだ。
「っ!?? な、何ですか……?」
 急に覗き込んできた火有に驚いたように体を一瞬後ろに引いて
尋ねた。
「いや、ボリスの眼ってさぁ、紫なんだなぁと思ってよ」
「え? あ、本当だ。綺麗な紫色だ」
 火有が身長の都合で少しだけ前屈みになりながら眼を覗き込ん
だまま呟くのを聞いたケルトが同様に眼を覗き込んで同意したの
だった。
 ボリスは急にそんなことを言われてますます意味がわからない
というように、2人に顔をのぞきこまれている恥ずかしさからか
わずかにほほを高潮させて眉を寄せながら2人を顔を交互に見つ
めた。
「確か天空の民に多いらしいよ。紫の眼って」
 そういって前に向き直りながら思い出すように言うと
「もうすぐ服屋だよ。ほらあそこ」
 そう話はもう終わりというように言うと一軒の店を指差し立ち
止まった。
 ちなみにそういって示された店は、かなり広い、高級そうな店
であったことをここに明記しておこう。

  
























SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送