漆黒の槍
 
 
 
 もう1度槍に視線を向けるともう1度今度はじっくりと確かめ
るように左右に振ってみたり小さい型をいくつか構えてみた。
 それで解ったのだが持ち手もしっかりと馴染んでいいし、重さ
もちょうど火有が振るのに適した重さで、長さも振り回して地面
にあたることのないちょうどいい長さとなっていてまるで火有の
体格を計算しつくしたような完璧なつくりとなっていた。
「気に入ったんですね」
 惚れ惚れとした様子で槍を見つめる火有にボリスはくすくすと
楽しそうに笑いながらいうと、火有もそれに負けじと勝気な笑み
を向けた。
「ああ。まるでオーダーメイドで造ったみてーだ」
 楽しげに答える火有の言葉にどうやら聞きなれていないのだろ
う言葉が混じっていたのか少し首をかしげながら
「おーだーめいどですか?」
 そう尋ねてきた。おそらく知らないのだろう。
「ん? オーダーメイドってのはな、つまり自分に完全に合わせた
もの、一点ものって言い方もあるな
 武器とか服なら完全に自分のサイズに合わせるんだ。服なら着
るときぴったりになるように、武器なら使いやすいようにだな」
 そう軽く説明するとボリスもそれに「なるほど」と頷くと
「じゃぁ、その槍はまるでそのオーダーメイドみたいな感じでとて
も合ってるということですね」
 うれしそうに手を合わせながらそういうボリスに頷いて答える
と「よかったですね」といってきた。
 火有もそれに「おう」と答えると槍を肩に担いで見せると、それ
と同時に後ろから軽い衝撃が来てそちらを見ると腰の辺りにケル
トがいた。
「火有さん、買うもの決まりましたか?」
 火有が槍を担いでいるのに気がついたのだろうそういうと、火
有はその楽しげなケルトの表情や態度につられて思わず「おう」と
答えてしまい答えた後で心の中で「しまった!」と思ったがもう後
の祭りなのである。
 火有の答えを聞いたケルトはさらにうれしそうな表情になると
「じゃぁ、早く買いにいこう。あっちにおじいさんがいるから、
今行けばすぐにお金払えるよ」
 そういって火有の腕をぐいぐいと引っ張りながらボリスにも「早
く早く」と催促の声をかけていた。
 その間火有の「自分でどうにかする」という言葉は無視され続
けたのは言うまでもないことなのだが、少々哀れにも感じるがこ
ればかりはしょうがないのかもしれない。
「じゃ、じゃぁ、僕は先に外で待ってますね。買うものもないです
し……」
 1人ボリスはそんな2人を見送りながら店の外へと出て行って
しまったのだった。
 とりあえず火有が槍を買うことはすでに決定事項となったよう
である。
 

  
























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