結局の購入
 
 
 
 ケルトに押される形でほかのものも選ぶことになった火有だ
が、他に欲しいと思えるようなものもなく、しぶしぶ眺めながら
時間を潰すことにしたのだった。
 といってもほかに買おうという気にもなれずただ眺めて2人の
買い物が終わるのを待つだけだった。
「やっぱほしいって思うようなやつはねーな」
 ポツリと呟いてケルト達のほうを見てみれば、なにやらこちら
とボリスのほうにネックレスやらブレスレットやらを持ち上げて
眺めては戻すを繰り返していた。どうやら彼が探しているのはボ
リスと火有のものであって自分のものではないらしい。
(ボリスは、買わないと思うけど……。)
 そう内心思ったりもしたが、ケルトもああ見えてなかなかに押
しが強い子供だ。ついでに言えば泣き落としになればボリスは折
れる。いや、確実に負ける、といったほうが正しいだろう。見た
目どおりに人が好い性格なのだから。
「ね、ね、火有さん、これはどう?」
 おそらく店主と火有の会話を聞いていたのだろう、彼が示した
のは、火有が持っているブラッドストーンのネックレスとピアス
を差し出してきた。
 とりあえずは受け取ることにして持ち上げてみるとケルトは嬉
しそうに似合う似合うと連呼して、うきうきとした様子でほかの
を探し始めた。
「結局俺もお人好し、か」
 楽しげな様子のケルトにあきらめて付き合うことを決めた火有
はそう口の中で呟いた。
「? 何?」
 ケルトは火有の呟きに首をかしげるように見上げてきたが、そ
れには「なんでもない」と答えて自分が買うことを決めたものと同
じ石のついた装飾品を探したのだった。
「火有さんはやっぱ赤が似合うよね」
 いくつも石を見ながら言うケルトに少し苦笑した。何も赤ばか
りでは同系色の紙を持つ火有では映えない可能性もあるし、むし
ろ黒などの色のほうがしっくり来ることだってあるのだ。
「赤ばっかじゃなくて、黒があってもいいと思うけどね」
 ケルトの言葉にボリスが控えめに言葉を挟んだ。だが言われた
当のケルトは「そうかなぁ?」と首を傾げるばかりだったが。
「じゃぁいっそこの薄水色の石は? 意外と似合うかもよ?」
 見つけた石を持ち上げていってくるケルトにボリスが少し考え
てからなぜかわずかに赤くなった。
 そのボリスの反応に気づいた火有はどうしたんだ? というよ
うに首を傾げて相手の言葉を待ったが、その火有の反応とさして
まを空けずに言いにくそうに
「それは……アクアマリンといって………………幸せな…………
結婚を導く……石です……」
 と蚊の鳴くようなか細い声で呟いた。
 そのボリスの説明にケルトは少し間を空けて一気に真っ赤に
なった。
「俺ら、まだ結婚する年じゃねーな」
 その説明に火有は同意するように呟いて、ケルトはさらに赤く
なった。確かにケルトは言うに及ばずだが、火有もまだ結婚する
ような歳ではなかった。
「……………………………………。
 そうですね」
 火有の追い討ちに近い一言でうつむいて蚊の鳴くような小さな
声でそう言うとその石を棚に戻したのだった。
 そして何のかんのでほとんどが赤い石でまとまってしまったが
最終的には最初に渡されたブラッドストーンのネックレスとピアスにカーネリアンのピアスとル
ビーのブレスレット、そして唯一の黒い宝石であるオブシディア
ンのネックレスを追加で購入することで決まったのだった。
 実は当初これにさらにピアスを6つとブレスレットを3つ追加
しようとするケルトを宥めすかしての結果なのだ。これでもかな
り高価なので十分だといってやっと納得させたのだ。
「じゃぁ、いくらですか?」
 結局ボリスがアマゾナイトのピアスを、ケルトが黄色のアラゴ
ナイトのブレスレットを買うことになったらしくそう尋ねるケル
トに、店主は少し考えるように間を空けると
「代金は要らん」
 そう簡潔に伝えてきた。
「はぁ? 何で?」
「お前らが気に入った」
「だからって何するにしても金はいるんだろう?」
「気にいらん奴らからぼったくっている」
 火有が困ったように尋ねてもそう短い答えだけが返ってきて取
り合ってはもらえそうになかった。

  
























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