微妙な敗北感
 
 
 
 結局断りきれなかった火有は最後の砦とでも言うように口を開
「金貯まったらすぐにこの分は返すからな」
 と負け惜しみのようにそう言ったのだった。
 ケルトはその火有の言葉にきょとんとしたような表情をになる
と、まるで鈴を鳴らすような声で笑い声を上げたのだった。
「笑うなっての! 貸し借りは嫌いなんだよ」
 あまりにも笑うケルトに火有はそう言ってまたケルトの頭を力
任せに撫でたのだった。
「あはは……、って痛い痛い。ごめんなさいってばぁ。だってそん
な事気にするなんてあんまりにもらしくってぇもう……。あはは
はは……」
 あまりにも笑い続けるケルトに火有は諦めたように溜息を零す
と改めて並べられている石に視線を落としたのだった。
 そうやって言い合っているうちに呼ばれた店主が奥からゆっく
りとでてきたのに気付いた。
「あ、店主さんですか?」
「そうだが?」
 でてきたその男性に対しケルトはにこりと笑いながら尋ねたが
店主はかなり無愛想に頷くばかりだった。
「あの、此処にあるやつってパワーストーンですよね? 他にもあ
るんですか?」
 ケルトはその店主の無愛想さにも対し別にしていないとでも言
うようにそう言うと、首を傾げて周囲を見た。
 店主のほうはそのケルトの言葉に少し考えるように同じように
視線をめぐらせると
「身に付けるものも含め、今売りに出せるようなやつは此処にある
ので全部だ」
 そう言ってきたのでケルトはそうなのかと思いながらやや高め
のワゴンの中を覗き込んでいたのだった。
 そんな様子のケルトを苦笑気味に眺めてから、先程から持って
いた名前も知らない宝石を持ちながらワゴンに置かれている様々
な石を眺めることにしたのだった。
 と入っても守護石については素人同然の火有は何を選べがいい
のかなんて分からないということもあり、隣で真剣に聞いている
ケルトの説明をかいつまんで聞きながら自分にあった石を選ぶべ
きなのかと思ったのだった。
「なぁ、勝利をもたらす石ってのはあるのか?」
「それならばルビーだろう。ロッククリスタルでバランスを整えた
ピアスがあるぞ」
 火有がケルトには失礼かと思いながらも横からそう尋ねると、
店主の方は大して気にしていないとでも言うようにすぐにそう返
してきたので、それに頷きながら示された石を手にとって、ほか
にはと興味深そうに尋ねたのだった。
 店主はその火有の言葉にじっと見定めるように見つめるとしば
らく黙り込んだ。
「ほかにならば古来は兵士が傷を受けない守り石として持っていた
とされるブラッドストーンにカーネリアンとロッククリスタルと
プラチナでバランスを整えたブレスレットが合うだろう」
「おう。ありがと
 結構綺麗な色だなぁ。ケルト、俺これにするわ」
 店主に勧められた守護石を見てそういうとケルトにそう伝え
た。もちろん店主に勧められたからといってそれを必ず買うのか
といわれれば、もちろん彼の性格上そんなことは絶対にない。あ
くまでも今回は彼自身が気に入ったからこそ買うといったのだっ
た。
 だがそれに異議を唱えたのは、いわれたケルトだったりもす
る。
「え? 駄目です、まだ選んでますから!」
 火有の言葉にすぐに顔を上げるやそういうと、まだ数も少ない
んですからもう少し選んでください。となぜかもう講義を受けて
しまい火有はしぶしぶそれに従うことにしたのだった。
 一応代金を出してもらう手前、文句は言えないらしい。

  
























SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送