不思議な石と店主
 
 
 
 火有はその言葉に少し考えたが、もともと宝石などを持つ主義
ではないということもあり何も持っていないので店主に
「んー、交換できるようなやつ何も持ってねーし、いいわ。」
 そう言って持っていたネックレスを返そうとしたが、店主はし
ばらく考えるように見つめて、受け取らなかった。
 その行動はまるで何か答えを受け次にどうするかを考えている
といった風で、今のこの状況ではあまり似つかわしくない行動の
ように思えた。
 火有はその店主の行動に首を傾げて訝しげに見つめたが暫くす
ると
「その石はもう暫く持っておくといい。」
 そう言って、ネックレスを持った手ごと火有にそれを押し返し
たのだった。
 火有は何故店主がそんな事を言うのかわからず首をかしげて隣
りに立つボリスのほうを見たが、彼も解からないというように困
り顔で首をかしげていた。
 何せ火有は交換できるものも持っていないから返すといったの
に、もう暫く持っておくといいとはどういう意味なのか。どっち
にしろ買う事はできないのだから持たせておく必要も無いように
思われるのだが。 
 そうしている間に店主は2人に背を向け、店の奥へと入って
いってしまった。
「どうしてもっとけっていたんだろうな?」
 店主が完全に店の奥に姿を消したところで火有はそうボリスに
心底不思議そうに尋ねた。
 だがこの場合ボリスに聞いても答えが出るわけではない。彼に
もどうしてそんな風に店主が言ったのか解からないのだから。他
人の考えがわかるようならそれはすでに普通ではないのであるわ
けなのだから、普通の2人に解かる筈もなかった。
 だからボリスもその火有の言葉には困ったように
「さぁ、どうしてでしょうね?」
 と答えるより他になかったのだった。
 火有はそのボリスの答えに少し苦笑いの表情を見せると
「ボリスならわかるか持って思ったんだけどなぁ。」
 そう小さくぼやいて見せたのだった
 その小さなぼやくにボリスは苦笑のような普通の笑みのような
複雑な表情を浮かべると
「他人の考えが正確に読めたら苦労なんてしませんよ。」
 そう火有に答えたのだった。
 たしかにそれは言われてみればその通りな答えで火有はその答
えにまた苦笑を零した。言われてみて確かに自分の言葉のおかし
さに苦笑せずにはいられない。自分でもできない事を何他人にさ
せようとしているのかという感じだった。
「そりゃ確かにそうだわ。普段から何考えてんのかわかんねーやつ
もいるからなぁ。」
 そう言うと、先程押し返されたネックレスをそのまま持って他
の宝石も見る事にしたのだった。

  
























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