きついもの
 
 
 
第四夜:宝石と武器と時兎
 
 これほどに甘いものがどうやったら食べれるのかというのもあ
るが、それ以上に先程から食べる量を見てどうしてこの小さな体
にピザやらトーストやらハムサラダ、グラタン、タマゴサンドに
加え桜餅とどうやればこれだけのものが入るのかという感じだっ
た。
 その挙句に今度は休むことなく苺パフェを食べているのだから
見ているこっちは意外ときつい。
 どうやら今朝の食べる量はきっちりと少なくされていたらし
い。その光景を見ながらおにぎりや野菜スープを口に運んでいた
が、それもすでになくなり、最後の珈琲ゼリーを食べていた。
 隣りを眺めながら食べていたが、パクパクとパフェを軽くたい
らげていくケルトを見ていると流石に食べるきも失せそうにな
る。おかげで珈琲ゼリーの味など解かりもしなかった。
「……………………………………よくはいるな。」
「ふぁい?」
 呆れかえった口調でそう声を掛けてみるが、すると食べている
途中だったこともあり、口の周りに大量のクリームをつけて振り
向いてきた。
 その顔にまた呆れてハンカチをポケットから出すと、顔をこし
こしと拭いた。
「ふく……っ。」
 また朝と同様に何も言わずに口の周りをふいてきたため、なに
やら妙な声を出したがそれにはあえて反応せずに拭ききると溜息
1つついた。
「お前名、朝にも言ったよな? 口の周りにものつけたまんまに
するなって。ちゃんと注意しろ、本当に行儀悪いぞ。」
 そう言うと、ケルトは何処かバツが悪そうにぶつぶつと何かを
呟いていたが、そこはあえて聞こえないフリを決め込んだのだっ
た。
 ボリスはその2人の態度を見てなにやら微笑ましげに微笑んで
いたが、それにもあえてツッコミはいれなかった。
 暫くまたそうやって何も言わずに火有はすでに5杯目になる珈
琲を飲んでいるとケルトがふと、メニューを手に取り何かに気付
いたのか考え込む仕草をした。
 そして何かを決めたのか店員を呼ぶと
「すみません、この特大チョコパ
フェを追加でお願いします。」
 即行で出て行くことを決意したのは言うまでもない。苺パフェ
だけなら何とかもたせる自信はあった、だがチョコパフェまでき
てはとてもではないがもつはずもなく……。
「わり…………ケルト、俺、出るわ……。」
「店の外にですか?」
 火有の突然の言葉にもすぐに反応を返すように顔を上げて尋ね
てくるケルトに、1つ頷いて答えると、正面に座っていたボリス
も同様にやや青ざめた顔で立ち上がった。
「すいません、ケルト君。僕も外に出ていますね。」
 そうケルトに断るように離れると、火有の隣りにそっと立っ
た。
「とりあえず、ほら、此処に入る前に見つけた、パワーストーン
の店? あそこ行ってるわ。」
 そう言うとけるとはちょっと困ったように首を傾げてから
「解かりました、困った事になったら呼びますね。」
 そう言って手を振ってきた。
 それに答えて店をすっと出て行った。なぜか店員は止めてはこ
なかった。
 そして外に出て先程見つけた守護石店に2人揃って足を運ん
だ。
 その店は先程見たときは遠目に見た程度なので気付かなかった
が、店名がなくただ売り物であるらしい守護石が所狭し……い
や、置けるだけ置かれているばかりだった。
 その置きかたに軽く首をかしげながら店の前で足を止め置かれ
ている物に眼を向けた。すると更に守護石の置き方にも首を傾げ
た。まるで見つけたものから置いていきました。とでもいうよう
に乱雑に規則もなくそのまま置かれているのだ。中には何処から
か採取でもしてきたのか土のついたものまである。
 置かれている物については、火有はこう言うのに興味がなかっ
たということもあって大した知識はないが、それでも解かる水晶
やアメジストなど知名度の高いものが数多く置かれていた。
 「守護石をお求めか?」
 軽く眺めていると、店主らしき男性が出てきて火有とボリスに
そう尋ねてきたので、それに少し考えると
「んー、まだわかんねぇ。」
 そう答えて手元にあるいくつかの石を手に取り持ち上げた。そ
の隣りでボリスの、もう少し見てから決めます。と答える声が聞
こえた。
 どうでもいい事だがその店主らしき男性、はっきりいって守護
石とは言え宝石を扱っている店の店主とは思えない、随分と厳つ
く顔に傷のある、言い方は悪かもしれないが強面である。
 その言葉に店主は片眉だけ上げて口元に笑みを浮かべると奥か
ら別のワゴン−といってもよいのかは解からないが−を出して彼
の前に置いた。
 どうやらこれも見て決めろ、ということらしい。
 だが大した知識もない火有からしてみれば置かれていても、ど
れが良いのかなどわからず眉を寄せるばかりだった。
 そうやって見ていると、何を思ったのか店主が更に別のものを
表に出してきた。
 それを見て火有は目をどういう意味かと見開き店主を見るも、
彼はその火有の反応に満足そうに口元を歪めた。
 火有はその反応に少しだけ眉を寄せ、それでも新たに出された
石を眺める事にして視線を下に移した。

  
























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