甘味からの逃亡?
 
 
 
 火有はしばらく珈琲を飲みながら周囲からする甘い香りに軽い
溜息をつき、もうすぐくるであろうものに諦めを持ちはじめた。
 兎にも角にも彼らが食べ終わるくらいまでならばここにいられ
るだろうと思って苦笑すると、珈琲を
1度置いた。
「まだ僕のこないなぁ。」
 ケルトが待ちわびるような口調でハムサラダを口にしながらポ
ツリと呟いたが、それがどれを指すのかがわからず首を傾げるボリスと、解かっているがあえて
何も言わない火有の視線が
1度交わりはなれた。
 ケルトがたのんだものについてはあまりよく覚えていないが、
確か苺パフェの特大がきていないのだけは確かのはずだった。
 他はあまりよく覚えていないが、確か甘いものだけだった様な
きがするし、そうでなかったようなきもする。甘いのが多かった
のはまず、間違いなかっただろうが。
 そう思いながら、苺パフェがどんな大きさのものか少し想像し
てみた。
 火有は記憶の中の、バケツ一杯に入ったパフェや、座ったまま
だと自分よりも高い山のようなもの、殆ど生クリームのみのよう
なパフェなどが思い出されていた。
「………………大丈夫、ですか?」
 思い出したことで気分が悪くなってしまい、顔が青くでもなっ
ていたのかそうボリスが躊躇い気味に尋ねてきた。
 火有はそれに対し、気分が悪いのを無理矢理やり過ごして大丈
夫だと答えると珈琲を一気に飲んだ。口の中に強い苦味が残り、
喉を熱い液体が流れていくのを感じた。
 少し間を空けて店員が残りのメニューののったトレイを持ってきた。
 それは、ピザとグラタン、桜餅にショートケーキ、それにボリ
スのたのんだコーンポタージュとドーナッツに火有の頼んだ珈琲
ゼリーと野菜スープだったが、苺パフェはもしかしたら大きすぎ
てこの後あらためてもってくるのかもしれない。店員が持てる量
は今回はどうやってもこれが限度だろうから。
「パフェは、最後かぁ……。」
 どこか残念そうに呟くケルトにボリスが苦笑気味に「すぐに着
ますよ。」と慰める声が聞こえるが、火有はなにも言う事ができ
なかった。正面の視界の中に突然入ってきた『ある』物体の出現
によって石化してしまっていたから。
 その『ある』物体とは言うまでもなくケルトのたのんだパフェなの
だが、見た瞬間に火有は自分の想像の中で最も最悪なものが当たった
事を確信した。
 何をどうやってそんな風に重ね上げたのかは解からない、とい
うか考えたくもなかったが、それははっきりといってしまえば今
座っている状態の火有とほぼ同じくらい。というよりも殆どパ
フェというよりも生クリームの塊に苺をこれでもかと挟んだ山の
ような状態だった。
「……………………うあぁ…………。でかっ!」
 火有の視線の動きに気づいたのかそのパフェの方を見たボリス
も流石に呆れを通り越して恐怖しているような震えた声でそう呟
いた。
 だがそれとは反対にケルトはその来たパフェを嬉々とした様子
で受け取っていた。これ以上ないほどに至福そうな笑みである
「美味しいですよぉ。」
 隣りで立って食べる姿を横目で見ながら聞こえる声に少し眉を
寄せてしまう。生クリームの匂いが横から漂ってきて、苦手でな
くてもこれはきつい。
「……………………大丈夫ですか? 先、外いきます?」
 少し顰められた眉に気付いたボリスがそう声をかけてきた。火
有はその問いに少し苦笑して首を横に振った
「いいや、遠慮しとく。まだ食ってないやつもあるしな。」
 そう言い、心配そうな表情をするボリスに苦笑を向けて手元に
ある梅干のおにぎりを手にとって見せた。
「解かりました。でも無理はしないようにしてくださいね。」
 火有の行動にさらに強く眉を寄せてそう言うと自分もきた料理
に手を伸ばしはじめた。
 そんなボリスに苦笑しながら頷くとおにぎりに口をつけた。強
い梅干の酸味が生クリームの匂いと口の中にあるような感じのす
る甘味を押しのけてくれた。
 それに感謝しながらもう少しだけ、せめてケルトが食べ終わるまで 此処にいようと自分に言い聞かせたのだった。
 
END

やっと終わりです
にしても此処からはキャラごとにはっきりと態度が変わります
彼はとりあえず我慢するタイプのようです

  
























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