珈琲と蜂蜜の香り踊る
 
 
 
 火有の意味の解からない言葉にはっきりと意味が解からないと
首を傾げて見ていたが、トーストにたっぷりの蜂蜜をつけ口に運
ぶと至福といわんばかりの笑みを零した。それを見た火有ははっ
きりと表情を歪めて退くような仕草を見せた。どういうべきか解
からないが胃がムカムカして物を口に運ぶ気も失せそうだった。
 だがそんな事には気付く様子もなく−むしろ気付いてらすごい
のだが。−美味しそうに2枚目のトーストを口に運ぶケルトを、
食べる手を止めて半ば呆れ気味に見つめた。とりあえずツナサン
ドで口の中の変な感じと神経をどうにか切り替えようと思う事に
した。
「……? 大丈夫ですか?」
 明らかにわかるほどに食べる速度の落ちた火有に気付いたボリ
スが心配そうに声をかけてきた。
 心配そうに声をかけてくるボリスに苦笑で返すが、やはり甘い
ものを頬張る人間の隣で食べるのはきつく、はっきりいって甘い
蜂蜜の匂いがこちらにまでして少々落ち込みそうだった。
 だが空腹を体が訴えていることも事実な火有は正面に座るボリ
スよりも少し上の方に視線を向けて軽く溜息を零すと、残りのハ
ムサンドに手を伸ばした。
「塩味のきいたので助かったぜ……。」
 最早隣からくる朝とは比べ物にならない甘い香りに口の中まで
甘くなってしまうような錯覚に襲われながら、口にしたツナサン
ドの塩味にほっと安堵の息を漏らした。
 蜂蜜の甘い香りは心を和らげるとか言うやつがいたようには
思ったが、それでも限度が必要なんだな。とまだ鼻に強く残りつ
づける香りに片眉だけしかめ口元の笑みがひくつくのを感じなが
ら思ったのだった。
 そうやって蜂蜜の香りにたえながらツナサンドを食べ終えると
ブラックの珈琲を喉に流し込んだ。珈琲の強い苦味が口の中に広
がり、それに少しばかり眉を寄せたものの、蜂蜜の香りで舌に甘
味が広がっているような錯覚を覚えていた口には丁度よかった。
(こう言うとき珈琲は欠かせねぇな。)
 口の中の苦味を目を閉じながら味わいつつそう思うと、残りも
一気に飲み干した。飲み終えた後でもう一杯飲みたいかもしれな
いと思いながらカップをソーサーに置くと、それに気付いたのか
店員がコップに珈琲を追加してくれた。
 それに礼を言って新たに淹れられた珈琲に口をつけると、珈琲
の先程より強く感じる苦味に少し眉を寄せ、小さ目の角砂糖を
1
入れてから改めて口をつけた。
「珈琲、お好きなんですか? ストレートが。」
 ゆっくりと飲み干す火有に意外そうに尋ねてくるボリスに、
ちょっと視線を向けると少しばかり首を傾げて。
「んー、好きってほどじゃねぇけど。隣りがこうも甘い匂いを放っ
てるとなぁ……。」
 そう蒼苦笑気味に答えて「お前も飲むか?」とカップを差し出して
尋ねたが、彼はそれに対して首を振ると「に、苦いのはちょっ
と……。」と断ってきたので小さく笑ってそうか。とカップをさげ
た。
 そういえば彼の頼んだものはミルクティーだったかな。と思い
出しながら更に
1口飲んだ。
 そしてそろそろあれがくる頃だな。眉を寄せて確信をもって
思ったのだった。

  
























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