美味しい料理

　店員がまず持っていてくれたのはそれぞれが頼んだ飲み物とボ
リスのサンドイッチ、火有のツナサンドと梅干のおにぎり、そし
てケルトのトーストとハムサラダとタマゴサンドであった。

　３人はそれぞれの頼んだものを手にとり自分の元に引き寄せる
と、運んでくれた店員に簡易的に礼を言った。

｢たのんだのくるの早かったですね。火有さんのはなんか変な組み
合わせ……。｣

　手元に来たものを見て少し呆れ気味にケルトがそう呟いた。

　確かに火有の頼んだものはツナサンドと最後の追加注文の梅干
のおにぎりなのでバランスが悪いといえば、反論はできなかった。

　火有もその事に苦笑しつつ何もいわずに三角の形をしたおにぎ
りを指でつついた。まだ温かいところを見るとできたてのようで
ある。

　火有からしてみてもまさかこんな組み合わせで来るとは思わな
かったので苦笑する以外にどうしようもない。

｢でも、それだけで大丈夫なんですか？　待つ時間も長くなりそう
ですけど……。｣

　火有の注文した料理の数を見てボリスも心配そうに尋ねてきた
が、火有はそれに対しはっきりと苦笑して見せると

｢まだ全部は来てねーんですケド？｣

　と意地悪く答えた。

　ボリスはその答えにきょとりとした表情をしたがそれには苦笑
しただけで終わらせさらっと明後日のほうに視線を向けた。

　火有が言いたいのはまだ来ていない料理があるという事なのだ
が、どうやらすぐには伝わらなかったらしく苦笑して相手の表情
を盗み見た。ボリスはしばらく考えた後まだ来ていない料理にやっ
と気付いたらしく、ぽんと手を叩いた。

　手っ取り早い話が、珈琲ゼリーがまだ来ていないという事らし
い。

｢あ、そう言えば、そうですよね。｣

　やっとそのことに気づいたボリスは誰ともなしにそうつぶやく
と、内心で小さくきっと自分は最後までここにいられないのだろ
うなと落ち込んだのだった。

｢………………何話してるの？　て言うか食べないと冷めるよ？｣

　２人でこそこそと何かを話している。という感じの２人にケル
トが呆れたような声でそう言ってきた。

　確かにケルトの言い分は最もだったがはっきり言ってボリスの
はサンドイッチなので冷める心配はない。火有のものもサンドイッ
チで、おにぎりは別に冷めても美味しいから気にする必要はない
のだろう。

｢ん？　あ、んじゃ、食うか。｣

　ケルトの言葉にやっと気付いたように上を見ると、ツナサンド
を１つ摘み上げて食べた。

　当然のことながら塩味と多分マヨネーズのツナの味と、シャキ
シャキと歯ごたえのいいレタスの食感に笑みを浮かべた。これは
当たりだなと思いなが、はくはくと口に運びながら食べた。

｢美味しいの？？｣

　本当に美味しそうにぱくつく火有に首をかしげながらそう尋ね
てきた。実際火有はおいしそうに笑みを浮かべながら食べている
ので、見ている方も美味しいと言うのがよくわかった。

　火有はそのケルトのといに少し顔を上げると

｢うまいぞー。にぎりはまだ食ってねーからわかんねーけど。これ
は当たりーだな。｣

　そう簡潔に答えた。

　多少､意味のわからない発言もあるがそれはあえて目を瞑る事に
しとくという事で。