清流の中に
 
 
 
 それから少し歩いていると、さらさらと水の流れる音が聞こえ
はじめ、火有は楽しみと言うように笑みを浮かべてケルトの後を
付いて行った。
「もうすぐか? 音が聞こえるな。」
 楽しげに周りを見ながら言う火有にけるとも楽しげな表情にな
りながら歩いていくと、涼やかな音を立てて流れる川辺に辿り着
いた。
 ケルトはその川辺に辿り着くと火有のほうを向き
「ねぇ、綺麗な場所でしょ?」
 と尋ねた。
 ケルトのその言葉に火有も楽しげで勝気な笑みを浮かべると
「おう。気持ちよさそうだな。昼寝にはもってこいかもな。特に夏
なんか涼しそうだ。」
 そう答えたのだった。
 ケルトもその言葉に満面の笑みを浮かべると「ええ、夏なんかこ
こでいつも昼寝するんだ。涼しいよ。」と自慢下に伝えたのだった。
 火有もそれに頷いてでも「生意気。」と軽く首を絞めながら意地悪
そうに笑ってじゃれると、軽く周りを見渡した。腕の中でケルトが
同じようにしているのが腕などに触れる感触でわかった。
 そんな風に感じているとふと視界の端に入った岩の更に奥の影に
何か動くものが見えたように思い、腕にかこったケルトごと体を半
分ほど向けて見詰めた。腕の中でケルトが何か叫んだようだが今は
気にしている暇がない。
「ん……?」
 動いたものがあるのは解かったが、すぐにそれが何かと言うこと
は理解できなかった。なぜならそれは明らかに青味を帯びた髪と白
い人間の手であったからだ。
「おい、ケルト! あの岩見ろ、人間が倒れてる!! 行くぞ!」
 それを人の手と認識するやすぐにケルトから腕を放してそこに向
かって走っていった。
「へっ!? 人?! ど、どこ!??」
 火有の言葉に驚いて彼の向かった方に体を向けると、そこには確
かに濡れた青に似た色の髪と人の手が見え、それと知る前に駆けて
いった。
 その岩陰に倒れている人物は全身が濡れ、少し前まで川に流され
ていたのかまだ川に体の半分を浸け、冷え切っている様子だった。
「ど、どうしよう、火有さん。」
「どうしようじゃねー! とっとと岸にあげんだよ! ちょっと離れ
てろ!!」
 混乱するケルトにそう怒鳴ると川と岸の丁度間辺りに移動し、そ
の青年を仰向けにすると一息で抱き上げた。
「ほらケルト、こいつ降ろすから布敷け布! 地面に直接は避けるん
だ。」
 青年を抱き上げたままそう言うと、ケルトは慌てて近くにあった
布−正確にはマント−と引いた。青年は見かけよりも意外と軽く、
さしてふらつきもせずにそっとその布の上に降ろした。
 だが岸に上げるまでは良かったがどうすれば良いかわからず顔を
見合わせた。無論ケルトは火有のときと場所こそ違うが同様に城に
連れて行きたかったが、流石に2人でこの距離は無理があったし、
何より火有はすでに介抱をはじめていた。
「怪我ねーんだけどな。多分気失ってるだけだ。」
 ざっと傷がないかを確めていたらしく、そう呟くと心配そうに見
つけるケルトに視線を送った。

  
























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