赤と白の花の間に
 
 
 
 下の小川が流れる大通りを抜け、街を囲う外壁の重厚な門を抜
けると、そこは火有が思っていたような場所ではなく、見渡す限
りの広大な草原が広がっていた。
「うっへぇ〜。すげーな、てっきり外にも街があるんだと思ってた
けど、違うんだな。」
 眼前に広がる新緑の草原を見ながらそう言葉を零した。
 一面に翠の若葉が広がり、風が服ごとにその鮮やかな緑が波の
ようにさざめき、涼やかな印象を火有に与えた。
「この草原、昼寝をすると気持ち良いんだ。
 それにこの草原の少し向こう側で火有さんが倒れたんだよ。」
「へっ!? そうなのか?」
 ケルトは火有の感想に笑みを浮かべながらそう話すと、彼は意
外そうな驚いたような声で反応したので、少し彼の方へと眼をやっ
た。
 劇場を秘めているように太陽の光で真紅に透ける髪が風に遊ば
れ、その紅を後ろに流していた。その真直ぐに威風堂々と立つ姿
はどこか闘神を思わせ、頼もしさがあった。
 昨日は否定されたが、彼にはやはりこの紺青の空の色が相応し
いと思えてならなかった。
 そうやって見つめていると、ひりはケルトの視線に気付いたら
しく、彼のほうを向くと
「どうした? 何かあったのか?」
 そう尋ねた。
 するとケルトは慌てたように顔を真赤にして「なんでもない。」
というと火有の前をすたすたと早足に歩いていってしまった。
 火有は火有でなんでそんな反応をするのか解からずしきりに首
を傾げながらケルトの後を付いて行った。どの道後についていか
なくては目的地なんて解からないのだから。
「なぁ、ケルト、俺、大体どの辺に倒れてたんだ?」
 暫く歩いていてふと疑問に思ったことを尋ねると、ケルトは少
し周りを見てから、白を赤の花の咲き乱れる場所を指差した。
「あそこだよ。白と赤の中に、黒と赤があって、だから気付いたん
だ。」
 そう説明した。
 火有はその花が咲く場所を見て「そっか。」と答えると、少しその
場所を見つめた。
 何か思い出しはしないかと思ったのだが、何も思い出すことはで
きず、むしろこんな場所は知らないという結論に辿り着いた。もち
ろん自分は
この()世界()の住人ではないのだからそれは当然なのだと1
人自分の内心に突っ込みを入れた。
(にし手も、何でこんな場所にいたんだ? もろ見つけてくださいっ
て言うか、普通に考えて行き倒れって感じでもねーよな…。俺、痩
せてねーし。
)
 もう一度、確めるようによく観察しながらそう思ったが、まぁ考
えても解からないものは仕方がないと思い直し、ケルトの後をすた
すたとついて行ったのだった。

  
























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