過去に思いを馳せ
 
 
 

ケルトの小さなつぶやきは火有には聞こえなかったが、何かを言っ
たというのは気配でわかったのでうつむいている彼の顔を下から覗
き込んだ。
「どうかしたのか?」
 真赤になったケルトを下からしゃがみこんだ状態で見上げながら
尋ねた。
「な、なんでもないですっ。」
 下から不思議そうに尋ねてくる火有に大慌てで首を振って否定し
た。ついでに首を振りすぎて目も回ってしまったが。
 首の振りすぎで目を回してしまったケルトに苦笑すると立ち上がっ
て頭をぽんぽんと軽く叩いた。
「ま、ないならないでそれでいいさ。さて、そろそろ中に入るか。
このカッコじゃさすがに寒いわ。」
 んー。と伸びをしながら部屋に戻っていく火有を見てケルトも慌
てて後を追っていった。
 中に入った火有はベットに腰を降ろしてバルコニーに出るまで読
んでいた本の続きに目を通し始めた。特に読書が好きと言うわけで
はないが読まないわけでもないので、暇つぶしのようなものだった。
 その後は特にどちらも話題があるというわけではないので完全な
沈黙が降りていた。
 火有は時折自分を見つめているケルトの方にそっと視線を向けて
気付かれないように観察していた。そして先程のバルコニーでの会
話で最も気になった言葉を反芻していた。
(『白亜の都に紺碧の城、降りたつはは蒼き龍』
 どこだ? どこで俺はこの言葉を聞いた? 本で読んだんじゃな
い。
誰か(・・)から(・・)聞いた(・・・)んだ。誰だ。一体俺は誰からこの言葉を聞いた?)
 どこか、それも極最近聞いたような気がする言葉なのに思い出せ
ず火有は自分に苛立ちを覚えた。確かに聞いたはずなのだ、これに
よく(・・)
似た(・・)言葉(・・)
を。
『なるほど、白亜の都に紺碧の城、舞い降りたるは蒼き龍……というこ
とか。』
 一瞬浮かび上がった言葉に火有はびくりと体を強張らせた。どこで
聞いたのか思い出したのだ。彼は間違いなくこの城で、それもつい先
程までいたバルコニーで、この言葉をこの世界にいないはずの人物の
声で聞いたのだ。
「誰だ? 何で俺は気付いていなかったんだ?」
「え? どうかしたんですか?」
 本を読んでいたはずの火有が急に考え込み、呟いた言葉にケルトは
反応を返した。
 火有はすぐに無意識のうちに出た自分の言葉に気付き、ケルトにな
んでもないと答えた。
 そして持っていた本をケルトに軽く放って渡すとベットに寝転んだ。
「ケルト、わりー、本読んでたら眠くなっちまった。俺もう寝るわ。」
「ぅわっ! は? はい……。」
 急な話題の転換にケルトは目を白黒させながらも、投げられて本を
受けとってうなずいた。
 彼はそれを確認してから眠りについた。今気付いたことは明日、改
めて考えればいいと思ったのだった。
 
−END−

第一話終了です
これだけにどんなけ時間掛かってるんでしょうね…。
えーと、管理人イラスト書くの遅いんで、
もしかしたら忘れたころに挿絵がつく可能性ありです
この人は動かしやすいなぁ。って言うか問題ありなひとですね
にしてもいきなり他の話とリンクしてる
どこかは…探してください

  
























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