外を眺め
 
 
 

 そして、特に怪我をしているわけでもなく、体調も悪いわけでも
ないからと、先程のような危険なことはしないという条件付でバル
コニーに出ることを許してもらった。
 そのバルコニーに出て白い城下町を眺めた。
「やっぱきれいだよなぁ、この街♪」
 楽しそうに言う火有を見てケルトは嬉しそうなそれでいて誇らし
げに微笑んで
「クロス国の自慢ですよ!」
 と言った。
 嬉々とした表情で話すケルトを見てやっぱり自国が1番か。と思っ
たりもしたが、これほどの景色ならば自慢したくなるのもわかった。
他の国の景色がどのようなものかは解からないが…。
 そうやって嬉しそうに話す彼の言葉に相槌を打ちながら聞いてい
ると、変わったフレーズが耳に入ってきたので、なおも話しつづけ
る少年に視線を移すと
「『白亜の都』?」
 と尋ね返した。
 ケルトは火有の問いにすぐに反応を返すとにっこりと笑って
「はい。クロスは『白亜の都に紺碧の城。降りたつは蒼き龍』と詠
われるほどなんですよ!」
 そう胸を張っていった。
 まるで自分が誉められたように嬉しそうに話すケルトを優しげに
見つめていると、ケルトは恥ずかしくなったのか急に紅くなって俯
いてしまった。火有はそのケルトの反応を微笑ましく感じ声を出し
て笑うと不満気に睨まれてしまった。
「お前そうしてると年相応だな。」
 ケルトの反応を見ながらそういうとケルトの額をつついた。
 相手の言葉と行動にまだ多少の不満はあれど、その表情は本人に
自覚がなくとも本当に優しげなもので、もう少しこのままでもいい
かと思わせるものだったから。
「僕もまだ12歳ですから。」
 まだ不満の残る声でそう言ったが、しかし笑うと思っていた火有
は笑わずに逆にきょとんとした表情でケルトを見つめていた。それ
はあからさまと言ってしまえばそんな感じの反応だった。
「お前……12なの? ………………ちっこいな。」
「っ!? あ、あなたがでか過ぎるだけですっ!!」
 あまりといえばあまりな火有の言葉にケルトは思いっきり反論し
た。
 ちなみにケルトの今現在の身長は140cm弱、その歳の子供か
らすれば大きい方であるのだが、対して火有は189
cm強。ほぼ1
90
cmである。事実火有が大きすぎるだけだった。
 最も火有自身はそんなこと知ったこっちゃないというよりも、気
付いていないようだが……。
「そっかぁ? ……ん? あ、そうだわ。」
 首を傾げて少し考えた後自分の身長のことに気付いたらしく、1
人で納得したように頷いた。ケルトもそれを見て呆れたような表情
をした。
「そうですよ。これでも大きいほうだといわれてるんですから。」
 ぷぅという感じに頬を脹らませながら言った。子供らしいその反
応に火有は笑うと頭をぐしゃぐしゃっとなでた。
 ケルトは子ども扱いされたことに対し複雑そうな表情で彼を見上
げた。
 最も火有はそのようなケルトの表情を気にするつもりはないらし
く、むしろとことん子供扱いするつもりでいるらしかった。
 身長差というのはこういうところで態度を決めてしまうものなの
かと、ケルトは嘆息してしまった。
「ま、年下にゃかわんねーよ。最も俺よりちっこい大人やタメのほ
うが多かったけどさ……。」
まるで心の内を読んだかのような絶妙なタイミングでいってきた火
有を驚いて見上げた。最も頭2つ分も小さい背では見上げるにして
もかなり辛いものがあるのだが。
「あなたは外見で態度を変えないんですか?」
「? どんなに小さかろうと上は上だし、大きくたって下は下だろ?」
 ケルトの問いに対し何当然の事聞いてんだという表情でさらっと
答えた。
 彼は特に気にしていないし、深くは考えていないのであろうが、
それはケルトの背が彼を超えても態度は一生変えないという意思表
示にもなっていた。
 そこで彼は改めて針を眺めた。柵にもたれて景色を眺める姿は当
人の容姿もあいあまって1枚絵の様だった。
「かっこいいですねー。」
 半ば見とれるように見とれるように呟いたのだが、彼の普通より
も感度のいい耳はその呟きも聞き落とすことなく拾っていた。
「………………何いってるんだよ! ///
 少し顔を紅くしながらけるとの額を突付いていった。
 ケルトはケルトで聞かれていたという事実に耳まで赤くなってし
まった。相手には聞こえないと思うほど小さな呟きだったのだ。
 だがそれでも自らの自己主張をすることにした。
「だって今の火有さん、風景に溶け込んでとてもかっこよかったん
です。だから素直に言ったのに。」
 そういうとまた頬を脹らませてそっぽを向いたのだった。
 彼のそんな反応に苦笑をもらすと、後ろの城のほうを向いて見上
げると
「蒼い城に深紅は似合わねぇよ。」
 そういうと、ケルトのほうに顔を向け、彼の髪にぐしゃっとかき
混ぜるように手を置くと、その勢いで前のめりになったケルトを見
「この蒼に合うのはお前みたいなお日様だっての。」
 といったのだった。
 さらっとした物言いにただでさえ紅い顔を更にこれ以上は無理と
いうほど紅くすると、先程まで火有の手の置いてあった所に手を置
いて
「………………ずるい。」
 と口の中で呟いたのだった。
 流石にその声は火有の元まで届くことはなかった。

  
























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