守護石の購入
 
 
 
 ケルトの言葉にもうしばらく探すことになった神巫だが、自分
の分はもう特に必要なものがないということもありケルトとボリ
スに必要そうな、もしくは必要になるであろう物を選び出した。
 まずボリスようにと思い何種類かの石を見たが、やはり彼自身
の持つ気配というものもありまずは『天河石』と別名を持つアマ
ゾナイトを選び取った。
(アマゾナイト。『希望の石』とも言われストレスを解消して精
神と肉体の強化を図り、思考力、想像力などを増強する働きを
持っている。私はともかく、ボリス殿には必要かも知れんな
)
 隣りではケルトがまだなにやらがっさくするように必死に選ん
でいたが、どうやらその行動を見るに自分のものを選んでいるわ
けではないらしい。
「ケルト殿? 何をしておられるのだ?」
 隣りのケルトの行動がどうにも気になりそう尋ねてみるが答え
は返ってこず、代わりにこれでもないとか、これは派手すぎると
か、なにやらいやな予感を助長させるような声が聞こえてきた。
「一体誰のを選んでいるのやら……。」
 なんとなくだがわからなくもないことを小さく呟くとケルトに
は、といくつかの石を見始めたのだった。
「アラゴナイトか、確か集中力を高めて感情のバランスを保ち、
自分の能力を十分に発揮できるよう導く力を持つともいわれてる
な」
 その石を見ておそらく必要になる日は近いだろうとよくわから
ない予感に駆られて手に取った。
「ねーねー、神巫さん。神巫さんならこれ似合うんじゃない?」
 手に持ったアラゴナイトを見ているとそう横からケルトに言わ
れそちらを見ると、彼の手には銀か白金でできた鈴のついた三連
のアンクレットらしきものを持ってこちらに見せていた。
「………………それは?」
「それは? って、アンクレットだよ。プラチナ製だって。銀は
黒ずむと悪い気を呼んじゃうからないって言ってたよ。
 神巫さんならきっと似合うって。ほら、髪とおんなじ色」
 そういって渡してきたそれを思わず受け取ってしまったがすぐ
にこれ以上はと思い返そうとした。
「ケルト殿、私の分はもういいから……」
「え? 駄目ですよ。神巫さんに似合いそうなもの選ぶんですか
ら」
 神巫の言葉にも聞く耳持たずというようにそういうとほかの石
を選び出した。
 だがそれに対したまったものではないのは神巫のほうで、彼自
身はもともと自分に必要な効力のあるものを選んでいるのであっ
て見た目だけで選ばれては必要外なものまで買わされかねなかっ
た。
「ケルト殿、私はもう必要なものは選んだから……。
 ……………………………………………………、アクアマリンは
必要ないぞ……」
 なにやら薄水色の透明な石を手に取りこちらに見せようとする
ケルトのすぐにそう釘を刺した。
 これはいろいろな意味で必要ない。歳的にも、ついでに性別か
らしてもだが……。
 だがその釘にけるとは不満そうにほほを膨らませてこちらを見
てきたが、それにも少し眉を寄せた微妙な表情のまま
「その宝石は精神を鎮めて、穏やかで平和な気持ちに導く力を持
つといわれているが、もっとも大きな力は幸せな結婚をさせ、夫
婦を和合させる力だ。私達はまだ、結婚などしない」
 そう説明した。
 その説明にケルトは目を点にすると少し間を開けて顔を真っ赤
に染めた。確かにケルトは言うに及ばずだが、神巫もまだ結婚す
るような歳ではなかった。
「……………………………………。
 そうですね」
 うつむいて蚊の鳴くような小さな声でそう言うとその石を棚に
戻したのだった。
 そうやってしばらく選んでいたが、結局神巫が妥協するという
形になり最終的に最初にケルトが選んだアンクレットを2つと
カーネリアンにクリソベリルと、カルサイトにサーペンテインの
ネックレスと、ハーマキーダイヤモンドのブレスレットにセラ
フィナイトのついたプラチナの指輪を購入することになった。
 実は当初これにさらにピアスを4つとネックレスを7つにブレ
スレットを5つ追加しようとするケルトを宥めすかしての結果な
のだ。これでもかなり高価なので十分だといってやっと納得させ
たのだ。
「じゃぁ、いくらですか?」
 結局自分のものは神巫が選んでいたものを2人は買うことでい
つの間にか決まりそう尋ねるケルトに、店主は少し考えるように
間を空けると
「代金は要らん」
 そう簡潔に伝えてきた。
「なぜ?」
「お前らが気に入った」
「だが金は要るだろう?」
「気にいらん奴らからぼったくっている」
 神巫が困ったように尋ねてもそう短い答えだけが返ってきて取
り合ってはもらえそうになかった。

  
























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