小さな会話と予想
 
 
 
 店員がまず持っていてくれたのはそれぞれが頼んだ飲み物とボ
リスのサンドイッチ、神巫のハムエッグ、そしてケルトのトース
トとハムサラダとタマゴサンドであった。
 3人はそれぞれの頼んだものを手にとり自分の元に引き寄せる
と、運んでくれた店員に簡易的に礼を言った。
「たのんだのくるの早かったですね。神巫さんなんてもう全部きて
るし……。」
 手元に来たものを見て少し呆れ気味にケルトがそう呟いた。
 確かに神巫の持つものは少なく、紅茶と珈琲、そして唯一の食
べ物であるハムエッグのみなので簡単に揃っていた。
 神巫はその事を気にする風も無く一緒に置かれたフォークでハ
ムエッグを少しづつ食べる大きさに切っていった。
 神巫からしてみればそれは当然の事で、たのんだ数が少なく、
なおかつ作り易いものがはやくくるものと思っていたので、ある
程度まで切ったハムエッグを少しおいて紅茶を手に取り口をつけ
た。
「でも、それだけで大丈夫なんですか? 待つ時間も長くなりそう
ですけど……。」
 神巫の注文した料理の数を見てボリスも心配そうに尋ねてきた
が、神巫はそれに少し傍目にはわからない程度に眉を寄せると小
さく
「最後までいれるとは思わんのでな。」
 と答えた。
 ボリスはその答えにきょとりとした表情をしたがそれには答え
ようとはせず街の外にまた視線を向けてしまった。
 神巫にしてみれば充分な答えだったが、どうやらそれがうまく
伝わらなかったらしいボリスはしばらく首を傾げて考えていたが、
神巫が甘いものが苦手らしいという事を思い出し、ケルトを少し
見てから納得したように小さく溜息をついた。
 手っ取り早い話が、甘い匂いに負けるだろうから長くは此処に
いられない。ということらしい。
「僕も、持たないかも……。」
 何がとは言わなかったが小さくそう誰ともなしに呟くと、それ
が聞こえたらしい神巫が小さな、それでも隣りにいるボリスには
聞こえる程度の溜息をついたのだった。
 おそらく空気を読んだのかもしくは事情を察したのだろうとい
う事だけがわかった。
「………………何話してるの? て言うか食べないと冷めるよ?」
 2人でこそこそと何かを話している。という感じの2人にケル
トが呆れたような声でそう言ってきた。
 確かにケルトの言い分は最もだったがはっきり言ってボリスの
はサンドイッチなので冷める心配はない。神巫のはすでに冷めて
いるようだったが。
「ああ、いただくか。」
 ケルトの言葉にチラッと視線を向けてそう言うと、ハムエッグ
の切れ端を1切れ目フォークで刺し持ち上げるとはくりと口に入
れた。
 当然のことながら塩味のきいたハムの味と、どうやら砂糖を混
ぜてあるらしい卵の甘味に少し眉を寄せた。もしかしたら注文を
間違えたかもしれないと思いながらも、別にまずくもなし、食べ
れる味だったので2切れ目を口にした。
「まずいの? 美味しいの??」
 何も言わずに黙々と食べる神巫に不安になったケルトがそう尋
ねてきた。やはり何も言わずに、しかも表情も変えずに黙々と食
べられては不安にもなるというものらしい。
 神巫はそのケルトのといに少し顔を上げると
「まずくは、ない。ケルト殿なら好きな味でろう。…………私は少
し苦手だ。」
 そう簡潔に答えた。
 手っ取り早い話が人によって好みが分かれる味。ということら
しい。

  
























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