甘い香りと紅茶
 
 
 
 神巫のどちらとも取れる答えにまた不満そうな表情をしながら
見ていたが、トーストにたっぷりの蜂蜜をつけ口に運ぶと至福と
いわんばかりの笑みを零した。それを見た神巫は顔にこそ出さな
かったがなんともいえない思いをした。どういうべきか解からな
いが胃がムカムカして物を口に運ぶ気も失せそうだった。
 だがそんな事には気付く様子もなく−むしろ気付いてらすごい
のだが。−美味しそうに2枚目のトーストを口に運ぶケルトを、
食べる手を止めて半ば呆れ気味に見つめた。最早ハムエッグを食
べる気力もおきない、残してしまいそうだった。
「……? 大丈夫ですか?」
 食べる手を完全に止めてケルトを呆れ気味に眺める神巫に心配
そうに声をかけた。心なしか顔色が悪そうにも見える。
 心配そうに声をかけてくるボリスに苦笑で答えると置いた
フォークを手に取りもう1切れ刺すと躊躇いがちに口に運んだ。
ケルトのトーストを見た所為もあるかもしれないが、先程までは
あまり気にならなかった砂糖の甘味がより強くしたに残るような
気がして、紅茶を手に取ると1口口に含みハムエッグごと飲み込
んだ。
 だが最早どうしようもないほどに食欲が減退してしまった神巫
は、残りのハムエッグをどうしようかと考えた。流石に残すのは
誉められる行為でもないので何とか食べきろうと更に1切れ口に
運ぼうとしたが、入れる前に胃がむかむかしてとてもではないが
食べれそうになかった。
「…………ふぅ。さて、どうするか……。」 
 完全に困ったように1口サイズに切られたハムエッグをフォー
クで刺したりしながら溜息を吐いた。
 最も食べるしかないから仕方ないがとりあえず紅茶で無理矢理
流し込むしかないとはらを括ると2切れほど一気に口に運んだ。
やはり先程と同じように強く砂糖の味を意識してしまって2口と
噛むことなく紅茶で一気にのどに流し込むと、後5切れほどに
なったハムエッグをまた1切れずつ口に運び、今度は噛むことな
く一気に飲み込んだ。味を自覚するのは流石にきつかったのだ。
 そうやってどうにかハムエッグを食べきると改めて残った紅茶
に口をつけた。ハムエッグの味でよくわからなかったが、渋みの
中にも微かな甘味のある入れ方だった。苦味がないということは
かなりいい葉を使っているのだろう。それに微かに柑橘系のたぶ
んベルガモットだろうその香りがするおかげで砂糖の甘味で疲れ
てしまっていた神経をほぐすことができた。
(もう少し味わって飲めばよかったか……。)
 上等なもの特有の味にそう思わず残念にも思ったが、どうやら
頼めば−と言うよりも勝手に−追加で淹れてもらえるものらし
く、空になったカップに気付いた店員が同じ紅茶を注いでくれた。
 それに礼を言って新たに淹れられた紅茶に口をつけると、紅茶
特有の渋みと甘味を堪能した。
「紅茶、好きなんですか? 砂糖入れていないのが。」
 ゆっくりと飲み干す神巫に意外そうに尋ねてくるボリスに、
ちょっと視線を向けると頷いて答えた。
「砂糖はあまり好きではないのでな。それに紅茶の渋みが好きなの
だ。」
 そう簡潔に答えると「貴殿も飲むか?」とカップを差し出して尋ね
たが、彼はそれに対して首を振ると「ストレートはちょっと……。」
と断ってきたので小さく笑ってそうか。とカップをさげた。
 そういえば彼の頼んだものはミルクティーだったな。と思い出
しながら更に
1口飲んだ。
 そろそろあれがくる頃か? と少し不安に思いながら。

  
























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