重なる流れ
 
 
 
 それから少し歩いていると、さらさらと水の流れる音が聞こえ
始め、神巫は少し上を向いて無表情にケルトの後を付いて行った。
「もうすぐだな。流れの音がする。」
 音を正確に聞き取ろうとするように瞳を細めて呟く神巫にケル
トは不思議そうな表情になりながら歩いていくと川辺に辿り着い
た。
 ケルトはその川辺に立つと、少しだけ困ったような顔で神巫の
ほうを見ると
「この川の半ば辺りを、あっちから流れてきたんです。」
 そう説明した。
 神巫もそのケルトの説明に少し眉を上げて説明された場所を見
た。
「ここを流れていたのか……。
 やはり流れていた理由がわからんな。川の近くにいた覚えはな
いのだが。」
 戻った記憶を遡りながらそう答えた。実際こちらにきた直後の
記憶は無いので嘘も言っていない。もしかしたら来た場所が川の
上で、そこから落ちたのかもしれないが。
 ケルトもその言葉に少し苦笑して、じゃぁ、なんでだろ? と
首を傾げながら周囲を見渡した。神巫はそのケルトとは違い近く
に見える気の影に見えた幻を一瞥してから、それが誰かを確認す
る暇も無く何かを感じ反対側の岩へと視線を向けた。後で思うと
彼は記憶の中の青年とは随分髪形が変わってしまっていたが、ツ
チヅカだったのではないかと思った。
(あれは。)
 視線を向けた岩の影に人間の気配と動くものを見つけ、すぐさ
まそちらに足を向けた。
 一方ケルトも急に移動しだした神巫に気付き慌てて後を追った。
「へっ!? 人?!」
 神巫の後を追ったことで眼に入って生きた人間の白い手に気付
きよく見て見るとそこには、濡れた青に似た色の髪と人の手がた
しかにあった。
 その岩の影に倒れている人物は全身が濡れ、少し前まで川に流
されていたのか、まだ川に体の半分を浸け、冷え切っているよう
だった。唇が青紫に変色している。
「ど、どうしよう、神巫さん。」
「どうしたもこうしたも、岸上げる以外あるまい。このままでは体
に悪い。」
 困惑するケルトに冷静にそう言うと、青年を仰向けにし、そっ
と持ち上げた。
「ケルト殿、すまぬが、そのマントを敷いてくれ。地面に直接は避
けたい故。」
 青年を持ち上げたままそう言うと、ケルトは慌てて神巫が置い
ていたマントを広げた。青年は神巫の予想通り見かけより軽く、
簡単に岸に上げることができた。
 だが、岸に上げるまでは良かったが次に取る行動を決めかね顔
を見合わせた。無論ケルトは神巫のとき同様すぐにでも城につれ
て行きたかったが、流石に2人でこの距離は無理があるように思
えたし、何より神巫はすでに介抱をはじめていた。
「外傷は、無いようなのだが、どうも頭を打っているらしいな。瘤
がある。だが、気を失った直接の原因と言うわけでもないようだ。
おそらく川に流されて、ここに辿り着いたところで意識を失った
のだろう。」
 さっと傷がないかを確めたらしく、そう呟くと心配そうに見詰
めるケルトに視線を送った。

  
























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