優しい笑み
 
 
 
 ケルトのほうもその説明に納得した。確かに甘味のあると言う
だけのものは言いが、砂糖の味だけのようなものは……。という
人間は意外といる。この銀の髪の青年もそう言う人種ということ
らしい。
「へー。そうなんですか。」
 そう呟くと、ケルトは何か考え込むように俯き動かなくなって
しまった。
 神巫も突然止まったケルトを少し不思議そうなまなざしで見つ
めていたが何も言おうとはせず、相手が話し出すのをただ黙々と
待っていた。
 暫くお互いに何も言わずに黙っていると、神巫が何かに気付い
たのかゆっくりと口を開いた。
「ケルト殿、差し出がましいようだが貴殿は常にそのような口調な
のか? 本来はそうではあるまい?」
 疑問のように、それは完全に間違いないと確信したものの口調
だった。
 ケルトのほうは神巫の急な問いに驚いたような様子で顔を上げ
た。
「その口調って言うと……、今のこれ(・・)、ですか?」
「貴殿はそれ以外の口調で私に話したことがおありか?」
「………………いえ、ないです。」
 これ以上ないほどにはっきりと言い切る神巫の言葉に少々複雑
な表情で答えると、彼を見つめた。
「その口調、改めてはもらえぬか? できればで構わぬから普段の
ものに。」
 少し困ったような口調でそう神巫はケルトに尋ねた。
 ケルトはその神巫の言葉に意味が解からないというよりも、何
故そういうのか解からないというような表情で首を傾げた。
 神巫もすぐにケルトの心中を察すると少し考えながら
「貴殿は王家のものだろう? そのようなものが私のような一介の
市民無勢に敬語を使うのは些か可笑しいと思う。このように王城
で休ませて戴いているだけでも破格の扱いと言えるだろうし、周
りのそのことが気になっておられるようなのでな。」
 と説明した。
 事実ここまで来る道中、城の人間と幾度もすれ違いそのたびに
随分と不可解そうな眼差しで見られていたのだ。神巫はどちらか
と言えば勘がよく、そういう事柄には聡い側にいるというのもそ
の理由の
1つだった。
 だがその説明にも難しそうな、理解し難そうな表情で考え込む
ケルトに神巫は少し息をついて、近くにおいてあった紅茶ではな
く少し離れたところにおいてあるポットに入った珈琲を手に取り、
手元のカラのカップに注いだ。
 珈琲の苦味の強い香りが漂い、その香りを楽しんでから1口そ
れを口に含み飲み込んだ。
「ふぅ。…………? ケルト殿、如何なされた?」
 珈琲の何も混ぜていない特有の強い苦味が口に残って、その余
韻を楽しみながら一息入れていると、自分を凝視しているケルト
と目が合ってカップをソーサーに戻しながら尋ねた。
 声に怪訝そうな色が少しばかり含まれていたのは致し方ないこ
とだった。
「えーと。珈琲、砂糖も何も入れないんだなぁと思って……。」
 どうやら神巫が珈琲をストレートのブラックで飲んだことが意
外と言うよりも驚きだったらしく、少し俯き気味にそう答えた。
 神巫のほうもその答えに納得したように1つ頷き
「ああ、普通の珈琲はそうだな。砂糖は余り入れたくないというの
が本音でもあるのでな、余り入れることはないし、自分から入れ
ることも普通はありえないな。
 入れるとしたら、『エスプレッソ』と言うものぐらいだ。あれ
は入れんと苦すぎて飲めるものではない……。」
 ともう1度コップを手に取り口に運びながら説明した。
 ケルトはそれにへー。と感心しきった様子で頷いていたが、お
そらく後半の意味はわかっていないだろうというのが神巫の推測
だった。
 そしてふと思い出したように「ああ、そういえば」と片手で持って
いたカップを両手に持ち直し
「敬語、使われなかったな。
 其方の方が自然で、貴殿らしくて良いと思うぞ。」
 と珍しい笑みを浮かべて伝えたのだった。
 だが言われたほうは意外だったのか、真っ赤になると俯き小さく
照れ隠しに
「…早く、食べて街、行こう。」
 と呟いたのだった。
 神巫もそれに頷いて答えると、スコーンを手に取り食べ始めた。
 こうして朝の一時はゆっくりと過ぎていく。
ーENDー

これで第二夜終了です
彼は1番周りを観察してます
基本的に1番周りを見る人なんです
でも、この人が1番最初に記憶取り戻しましたね
その所為か、なんかいろんなものが見えるようになっちゃってますね
いや、元から見えてましたっけ?
その点に関しては戻らないほうがいいって思ってたかもしれませんね

  
























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