幻と幻想の舞う城を出て
 
 
 
第三夜:城下探索
 
 朝食を食べ終えた神巫とケルトの2人は城下に行く前に服を着
替えようということになり、一端神巫に宛がわれた部屋に戻って
いった。
 何せ今現在の神巫の服は、白いサイズが余りあっているとはい
えない大きめのボタンが2つほど外れたシャツに、紺のズボンの
みなのだ。
「このままでは不審者といわれても、言い訳できぬな。」
 自分の服装を確認しながらそう普通に、でも少しのため息を混
じらせて言うと、ケルトはあんまり違和感ないかもと視線をそら
しながら呟いたのだった。
 神巫はそのケルトの言葉にまた1つ溜息をこぼした。違和感が
なくてもいけないのだと言外に告げながら、とりあえず着替えよ
うということになったのだった。
だが、
「……私は一体何着着替えれば良いのだ?」
 部屋についてからおよそ30分以上、部屋にある物のみではあ
き足らず、別の部屋の服まで持ってきてとっかえひっかえ着替え
させられ本気で疲弊している様子で、普段とは違って、はっきり
と疲労を顔に出している神巫に最初から見ているケルトもかなり
同情的になっていた。
 そして最終的に青のハイネックに茶色のやや短めのコートと薄
茶色のマントに決まったのは更に1時間もした後の話だった。
「ご、ご苦労様です……。」
「ああ、少々疲れた……。」
 部屋にあった姿身の前で服を見ながらそう言うと少し眉を寄せ
て「マント、外しても良いか?」とケルトに尋ね、それを外したの
だった。
 どんな服にするかと聞かれ、違和感のないものを。と答えたの
は他ならぬ神巫なので文句を言うつもりはないが、少々
あれ(・・)には
似合わないと思ったのだった。
 そんなことを考えているとは気付かずケルトは「かっこい
い……。」といって、早く外へ行こうと催促してきたのだった。
 神巫もそれに頷いて答えると、ケルトの少し後ろについて部屋
を出て行ったのだった。
 部屋を出て歩きながら少し前を歩くケルトを見つめた。いや、
厳密には
ケルト(・・・)ではなくケルトに重なって(・・・・)見える不思議な幻を
見つめていたのだ。
 今現在のケルトは金の髪なのだが、神巫にのみ見えるその幻の
青年は目の前の少年よりも、そして神巫自身よりも少し背が高い
ぐらいの鮮やかな蒼く長い髪の16、7ほどの壮麗な青年だった。
 昨日まで、というよりも記憶の混乱が解けるまでは見えないも
のだったのだが、混乱が解けるとまるで当り前のように見えるよ
うになったのだ。おそらくはけるとの数年後の姿だろうと、なん
となくだが、そう思っていると、幻と本物のケルトが振り向いた。
城の扉についたらしかった。幻の青年の顔を見ると、その幻はすっ
と消えていった。
 その荘厳なつくりの扉から、かなり、それでも城にしては少々
狭いのかもしれない庭に見える不思議な蒼い龍と羽の生えた、お
そらくは妖精なのだろう者達が舞うのを見ながら、城を囲う堀に
掛けられた橋を渡り大きく雄大な城門を抜け街へと出て行ったの
だった。

  
























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