記憶を探るもの
 
 
 
第二夜:喪失者の1日
 
 次の日の早朝、クロスは軽い自己嫌悪と共に目覚めた。
 よりにもよって読書中に眠った挙句、自分よりも下の少年に運
ばせてしまったと……。
「……いや、今は自己嫌悪(その事)よりも、あれ(・・)が一体なんだったのかを考
えるべきだな。」
 そう昨日のことを思い起こし、無理に考えを切り替えると首を
端から見たら解からない程度だが、傾げた。あの時、間違いなく
彼は寝たくて眠ったわけではなかった。
 確かに身体的には眠っていたが精神的には殆ど起きていたのと
同じ状態だった。だから表状とは言え眠っている自分をケルトが
見つめていたことも、その後彼の魔法のらしきものでベットに運
ばれたことも理解していた。
「まるで私の意思とは違う別の力で無理矢理眠らされたような感じ
だったが。
 それにあの()()空間(・・)、あれはどこだ? あの声の主はなんと言っ
ていた?」
 眠っている間に思い出だしたことを口にしながら、更に曖昧な
記憶をたどろうとした。思い出そうとすれば必然的に頭痛がする
ものの、それは仕方のないことと割り切り何とかあの空間での出
来事を思い出すことができた。
「あの声は私に『後悔しても遅いぞ。』といっていたな。それに私
の記憶を奪おうとしていた。だがこのことを覚えていると言う事
は、奪われてはいないと見ていいはずではあるな。
 …………………………ということは本当に記憶喪失なのか? 
私は…。」
 続けて出てきた結論に軽い頭痛を覚えながら片手で目元を覆い、
天井を見上げて溜息をついた。
 とりあえず現実の問題を片付けることにしようと今だに頭痛の
治まらない頭を振って、目の前の1番大きな問題に意識を切り替
えた。
 記憶を戻す方法は大きく分けて3つある。1つ目は今ある記憶
から徐々にさかのぼっていく、2つ目は記憶失ったときと同じ衝
撃を与える。3つ目は自分を知る人間にあうというものだが、こ
れは不可能なので却下。2つ目も状況が悪化しかねないので問答
無用で却下。1つ目は……そもそもあの場所からどうさかのぼれ
ばいいのかわからなかった。
「……打つ手なし……か?」
 秀麗な眉を寄せて溜息を零した。何かきっかけがあれば思い出
せるという確信はあったのだが、そのきっかけが解からない。
 結局解決策1つ思いつかず深く思い起きてすでに3度目となる
溜息を吐いたのだった。
 何の解決策も思いつかず思考の袋小路に迷い込んでしまった自
分に気付き、誰にも解からない程度に自嘲の笑みを浮かべた。
 そして、少しの間思考を止めようとベットを降りて見晴らしの
良いバルコニーへと足を向けた。

  
























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