静かなるもの
 
 
 

 そしてしばらく動かずに眠っているのもかなり退屈なので少し
ベッドから出ると近くにある本棚に向かってそこそこの厚さ−と
いってもゆうに
25〜30cmはありそうな−本を45冊そこに立った
まま中を見ていると、少し難しい論文のようなないようである。
どうやら
世界(・・)()違って(・・・)()言葉と同様に文字も共通らしかった。
 物事の大半は頭を強くぶつけたショックで忘れているものの、
この世界が自分がいた場所とは明らかに違うという事は微かに残っ
ている記憶と落ちついてきた事によりすぐに理解できた。
 そして、その選んだ本をもってベッドにもどると本を横に置き
1番上にある本を読み始めた。内容はこの世界にある逸話や伝説、
神話に関する文献のようだった。その話しの内いくつかは名前だ
けなら聞いたことのある物であったが、内容は全く違う、という
よりも逆だった。
 その内容をとりあえず端から丹念に読んでいった。
 しばらくしてその本を1/3も読んだころ後ろの方から
「あーッ! 何読んでんですかぁ!!」
 というけるとの叫び声がしてそちらを向くとサンドイッチ−一
応とはいえ怪我人にそれはないと思う−とおそらくは紅茶の入っ
たコップを乗せたトレイを持った少年が立っていた。
「何って、この部屋にある本だが? それがどうかなされたのか?」
 少し瞳を細めて、軽く首を傾げて答えた。ただ単にきかれた事
への返答だった。
 本来聞いているものとは違うことはわかっているがあえてその
ことには触れなかった。そのことに彼も気付いているのだろう不
満そうな表情をして
「なんでベットでじとしてないんですか。」
 とサンドイッチと−これは近くにきたのでわかったのだが−紅
茶ではなくおそらく、レモンバームか何かのハーブティーのはいっ
たコップの乗ったトレイを近くにあった台の上において力なく呟
いた。
 そのケルトの態度に苦笑すると
「別段この程度どうという事はない。
 それに先程まで眠っていたのだ、今更眠気など気はしないのだ
から、本でも読まなければさすがに暇なのだ。しかたあるまい。」
 そう答えた。自分にしては珍しく長く話したものだと思いなが
ら。
 ケルトはクロスの答えにまだ不満がありるのか「待っててくれて
も……。」とぶつぶつと文句を呟いていた。
 クロスはそれに内心で苦笑しながらも微笑ましいと思っていたが
なんとなく意地悪っぽく
「私が本を取りに立ったとき、貴殿はおられなかったであろう?」
 と本の少し笑っていった。するとケルトはその言葉に苦虫でも噛
み潰したような表情をした。
 その様子にクロスは内心で意地が悪かったかとも思いはしたもの
の、表情は少しも表情を崩すことなくケルトを見ていたが、しばら
くして本に目を戻した。
「あ、クロスさん。サンドイッチ食べます?」
「………………………………………………。
 あの、ケルト殿、一応なりにも怪我人にそれはないと思うのだ
が……。」
 クロスはケルトの明るい一言に呆れ気味にいい返した。
 そのクロスの返答にケルトはショックと言わんばかりの表情をし
て見つめてきた。彼もそんな少年の表情にぱっと見はわからない程
度の苦笑を浮かべると
「……まぁ、私の怪我はさして重くもない上に寝こんでいたのも1日
のみだから、これでも良いだろうが……。もし、私より長く寝こん
だものがいれば何か軽いもの、たとえばスープやかゆなどを出すと
良い。
 長く食べていなければ食べていなかっただけ胃などは弱くなるも
んだからな。」
 そう説明をしてサンドイッチを1つつかむと口に含んだ。中身は
ハムで、残り2つは卵とツナらしい。
 クロスは1つ目のサンドイッチを軽く食べきるとハーブティーに
口をつけた。レモンに似た味が蜂蜜の味とともに口の中にひろがっ
た。そしてそれも手伝って残りの2つのサンドイッチも食べきると、
ひざの上においていた本に目を通し始めた。特にどうするという感
じもなくただ読むだけで、そこには微妙な沈黙が流れた。
「……ケルト殿?」
「はいぃっ!??」
 なんとなく沈黙が不自然に感じて、というよりも視線を感じてケ
ルトの名を読んでみると相手はボーっとしていたのか驚いた様子で
返事してきた。
 その様子にクロスは呆れたように溜め息をつくと本から目を再び
離し
「何を見ておられる。特に見てもおもしろいものでもなかろう?」
 とケルトを見て尋ねた。
 ケルトの方はそんなに見ていたのかと顔を赤くして慌てた様子で
わたわたと「いえ、あ、あ、の……。」となんとか弁解しようと必死
になっていた。
 クロスはその様子に一応
「私の顔に何か不審な点でも?」
 と助け舟のつもりで尋ねてみた
 別にあてずっぽうというわけでもなかった。なんとなくだが顔を
凝視していたように思ったからなのだが、どうやらそれは顔を耳元
まで赤くしている様子を見ると、当たっているらしかった。
 これ以上ないほどに慌てた様子でなんとか弁解しようと言葉をつ
むごうとしているのが良く解ったが、それは明確な言葉にはなって
いなかった。

   
























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