教皇合流
 
 
 
 あいまいに答えることなくローグに親しげな笑みを浮かべたま
ま幾度か頷くと
「龍人お方がここにおいでとは、これまた珍しいことですなぁ。こ
こにこられるのはよほど酔狂な方か、あの青い髪の御仁くらいで
すからのぉ」
 そう笑みを浮かべ深く皺を刻んだ表情で楽しげに話す老人に
ローグは苦笑を返した。この老人はぼけてはいない、おそらく孫
か子かが頻繁に手伝いに来ているかもしくは近所の人間がそれと
なく手伝いに来てくれているのだろう。
 何よりローグはこれでも一応封印龍であり一族の治療を担う治
癒龍でもあるので、人間の怪我を治すことこそできないがどんな
状態かも一目見れば必ずわかるのである。
 だが悲しいかな龍人族の治療は他人にしか聞かず自分が癒せな
い上にどういうわけか人間にはまったく効かない、というわけで
はないのだが後遺症が残ることが多々あるのだ。たぶん、狂戦士
のシュヴァルツには効くと思うが試したことがないので確証もな
い。
 ちなみにこのことは人間族は殆ど知らないし、ローグも伝える
つもりはない。龍人族にしか効かないのであれば人間が知る必要
はないというのが今までの理由だったが、今は教えた後の騒動が
いやなので教えないことにしている。主にクリスティーアに。
 ちなみにその酔狂な青い髪の御仁とはほかでもない彼にこの店
を教えてくれた友人である。
「ええ、少々野宿道具が必要になりまして。どこにおいているので
しょうか」
 そう尋ねると老人は深い皺をさらに深く笑みに刻みそれならば
と自分の横にある場所を指差し
「そこにあるものがよいでしょう。呪文字が刻まれている良品がそ
ろっておりますからな」
 そう答えてくれたので、ローグはそれに短く礼を言うとその示
された場所に足を運んだのだった。
 そこでいくつかの品を見てみると、どうやら龍人族から直接仕
入れているらしくそれは人間では書けないようなかなり流暢な
−それこそローグでさえ読めないような−呪文字が刻まれてい
た。
蚯蚓(みみず)が這った様な……文字だな。」
 とどのつまりとてつもない癖字ということである。
 癖字になるのは龍人族のみなのだ。人間ではまねるだけで精一
杯なのでとてもではないが癖はつかないし、ここまで高度な力は
使えない。せいぜい誰でも使える初級程度だ。
 読みにくいことには変わりないがそれでも質はいいので寝具用
のものを選び取ると、次にランプと最低湯ぐらいは沸かせるよう
にと小ぶりな鍋に万能ナイフを選んでいった。
「………………調理に小ぶりのフライパンもいるか……?」
 はて? と考えるようにある程度は調理で来るだろう中くらい
よりも2回りほど小ぶりのフライパンを手に取り口元に手を当て
て真剣に悩みだした。別段自分ひとりならばどうにでもなるの
だ、一週間絶食しても水さえあればどうにでもなる種族だし、一
応非常食ぐらいは持っていくのだし、シュヴァルツもあれで漆黒
の騎士団の総帥という役目柄ある程度はサバイバルもできる。と
いうかできなくては騎士団にいない。
 問題はクリスティーアとルクールドラメールのほうだ。龍人の
自分や狂戦士のシュヴァルツとはまったく違う純潔の人間である
以上、ある程度の栄養は確保する必要がある。となるとやはり非
常食だけでは無理というわけで、とどのつまり調理は必ず必要に
なるのだから、調理器具も必要最低限はそろえる必要がある。
「…………意外と不便だ」
 純潔の人間と共に行動したことのないローグは思わずそう本音
を零すと1つため息をついた。
 そして選んだ野寝具と小ぶりの鍋とフライパンに万能ナイフを
片手に持って老人の元に歩いていった。
「翁、これをいただきたいのだが」
 そう持っていたものを示すとゆっくりと顔を上げてローグの持
つものを見ると
「1500ティルじゃの」
 そういって金額を言ってきたのでそれに頷いて答えると持って
いた財布からていぃされた金額を渡していると
「祭司様? ローグ祭司様ではありませんか?」
 そう声をかけられ、驚いて渡す手を止めてわずかにかがんだ不
安定な姿勢のまま後ろを振り向くと、そこには昨夜同行すると伝
えられていた、蒼天の教団教皇、ルクールドラメールが立ってい
た。

  
























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