野宿道具屋【夢幻回廊】
 
 
 
 とりえず少しでも早くこの状況から脱するべく早足で武器街を
後にすると野宿道具などの野営道具を専門に扱っている店が特に
多い場所に向かった。
 このての場所に来るのはさすがに初めてなのでどこに行けばい
いのかわからず立ち止まって周囲を見て、そして昔同胞がこのあ
たりで特に品揃えと質のいい店があるといっていたのを遥か彼方
−と言うほど古いわけではないはずの−記憶を探り当て、その店
を探してみようかと
1人納得して足を進めた。
「確かこのあたりの【夢幻回廊】という店だったはず……。たかが
2週間前の記憶がどうしてこうも曖昧なんだろうか……」
 場所まできっちりと聞いていたのにもかかわらず、もはや朧け
にしか思い出すこともかなわない記憶に首をかしげた。もちろん
記憶力が低下した訳ではない。というかまだそんな歳じゃない、
若年性の痴呆症じゃあるまいし……。
 というよりも理由はよくわかっているのだ。クリスティーアと
行動を共にしてからはっきり言って記憶も吹っ飛びかねないよう
な経験を幾度となく−強制的に−させられているからだ。中には
自分の意思ではるか彼方に追いやりたいような記憶も−正直いろ
いろと−ある。
「……………………思い出したら胃が痛くなってきた……」
 あまり思い出したくないことを思い出してしまい左手で自分の
顔を覆いながら右手で調度胃があるはずの場所を押さえて歩いて
いった。その際何度目になるかもう解らない溜息をついたがそれ
についてはあえて気づかないことにしたのだった。
 そして探していた店の前に着くと軽く周囲を見渡した。場合に
よっては近くに見知った人間がいるかもしれないと考えてなのだ
が、どうやらその考えは杞憂に終わったらしい。クリスティーア
あたりならばいるかもしれないと思ったが、どうやらそれぞれの
探し物でこのあたりには彼らが買うことになっているものの店も
ないので迷子にでもなっていない限りは会うこともなさそうであ
る。
「というか迷子にはなってそうだが……、昨日の例もあるし………
………」
 シュヴァルツがいるから大丈夫だろうとは思いたいのだが、昨
日までの付き合いから彼女はおおよそにおいて自分の最悪の予想
の斜め
45度を行く最悪の人種ではないかと思っているので、共に
いるであろう彼には悪いがあまり気休めになっていない。
 とはいえこんな店の前で長考しているわけにもいかないので軽
くため息をつくと今までの嫌な考えを振り払うように軽く首を振
り、そういえばため息をつくと幸せが逃げるといったのはため息
をつく原因を作っている張本人だったなと思い出し特大のため息
をまた1つついたのだった。
 そしてみの背中に入ると、表板よりもやや手狭といった感じの
する、それでもかなり質の良いものを取り扱った店であることが
ぱっと見だけでも良くわかった。
 店内のもののおき方もよくできていて見やすく、場所もわかり
やすくされており、なるほど放浪癖のあるあの友人が自信を持っ
て薦めるといっていただけのことはあると思った。
 店の中を軽く見渡してから店主らしき老人がいる奥に歩いてい
くとあちらのほうもローグに気がついたのか軽く会釈をしてきた
ので、ローグもそれにならって会釈をすると老人も前まで歩いて
いき改めて深く会釈をした。
「翁、お1人でこの店を切り盛りしておられるのですか?」
 老人に首を傾げながら周りを見て尋ねた。
 あまり広くないとはいえどう考えてもこの老人1人で切り盛り
するにはつらいだろうと思いそう尋ねたが、それには笑みであい
まいに返されてしまったのだった。

  
























SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送