意外な発想
 
 
 
 とりあえず料理は頼んだのだからと、くるまでは楽しく話すこ
とに徹することに決めたらしいクリスティーアは外を眺めながら
この街をよく知る唯一の人物であるシュヴァルツにあれはどこ
か、あれは何かと興味津々といわんばかりに尋ね続けていた。
 またシュヴァルツも尋ねられるのは嫌ではないらしくその質問
に答えていっていた。
「あの黒い要塞っぽいのが騎士団の総本部で、あっちの蒼いのが
教団の総本山ってわけね?」
「そうだ。また騎士団と教団はたいていの町や村にあるし、その
概観も統一されていて必ず騎士団は黒系統、教団は蒼系統で纏め
る決まりになっている。
 それ故にそのどちらかの色のみの建物は他に存在はしない
な。」
 街の中央からちょうど南と北に別れる形で建っている建物を交
互に指差しいうクリスティーアの言葉に、ローグがそう補足的な
説明を入れると「だからどちらかに用事があればその色の建物を
探せばいい」と付け足したのだった。
 クリスティーアはそのローグの補足に「へぇ」と感心したように
テーブルに膝を立てて顎を手の上に乗せた状態で彼のほうへ視線
を向けると納得したというように頷いたのだった。
「この街ってさー、上から見るとなんか、原っぱみたいだねー」
 街をのんびりといった様子で眺めていたクリスティーアはふと
何かを思ったのかそう呟いた。
「は…………? 原っぱ、か?」
 2人は一瞬彼女のいった言葉が理解できなかったのかお互いに
眼を瞬かせてから、彼女と同じように街に視線を向けてその言葉
に納得した。
 確かに薄い若草色とでも言えばいいのだろうか、パステルグ
リーンで纏められた町並みは朝の光に照らされてさながら早春の
草原のようだった。
「ああ、なるほど。確かにこの町並みを上から見下ろすことなど
なかったから気づかなかったが、こうして見てみると草原に見え
るな」
 今まで気がつかなかったというように呟くシュヴァルツにクリ
スティーアは笑みを浮かべると
「もうちょい高いとこならもっと分かりやすいんだろうけどな。
まぁ、ここも結構高いし、だからよく見えるんだろうけど……」
「この宿はサティーティアないでは境界、騎士団の総本部に告ぐ
高さのある場所だからな。」
 クリスティーアの言葉にまたシュヴァルツがそういうと、彼女
は何かに気がついたのか奇妙なものを見るような眼でシュヴァル
ツを凝視した。
 シュヴァルツはシュヴァルツでなぜそんな眼で見られなくては
ならないのか解らず柳眉を思い切り寄せた。
 だがそんな彼の反応にも気がつかなかったのかしばらくの間そ
のままの表情で見続けると、違和感に気がついたのか「ああ」と小
さく呟き手を叩くと
「ヴァル敬語使ってないね。そっちのほうがいいよ」
 そう楽しげに呟いた。
 いわれた本人はまさかそういわれるとは思っていなかったの
か、驚いたという表情をして赤い瞳を大きく見開いた状態で今度
は先程とは逆にクリスティーアを凝視した。
 普通ならば敬語を使っていないことをとがめられることはあれ
ども、そちらのほうがいいといわれることなど皆無であっため本
心で驚いたといった感じなのだ。
 ローグはそんな2人の反応を楽しげに軽く眼を細めてみていた
が、店員が頼んだ料理を持ってきたのでその表情はすぐに消えて
しまったのだった。

  
























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