湯上りでも疲れるもの
 
 
 
 起きて風呂に入るだけでどっと疲れてしまったローグだが、こ
のまま入っていたらまたクリスティーアがどうかしたのかと入っ
てくるのは目に見えていたので履いていたズボンを脱ぐと軽く湯
冷めした体を湯船に浸けてぬくもった後上がり、脱衣所に出ると
すぐそばに置かれていたバスタオルで軽く水滴を拭き取った。
 そして乾いた新しい服とズボンに袖を通すと1番上に着るコー
トを手に持ちボタンは留めずに脱衣所を後にした。
「ああ、でられたのか」
「ん。クリスティーア殿は部屋に服を?」
 でてすぐに掛けられた声にそう尋ねた。
「ええ。濡れて冷たいし、重いだとかで」
 ローグの言葉にシュヴァルツはそう苦笑して答えた。
 クリスティーアは出てきたとき水滴を撒き散らしながら部屋を
早足で出ていったため、シュヴァルツはその水滴を拭くはめに
なったのだ。
「湯船に入ってきたからな。
 すまんな、濡れただろう? 部屋」
 苦笑気味に先程のことを思いだすとシュヴァルツに荘暗に水滴
を拭かせてしまったことをわびて、同時に礼を言った。
 それに対しシュヴァルツはあまり表情は変えずに、それでもど
こか呆れたような困ったような表情でいえ。と首を横に振ったの
だった。
 その答えにローグは困ったように笑みを浮かべると、まだ重く
濡れた髪に指を絡めてその髪の滴を確かめながら1度下まで結く
と考えるように俯き掌に魔力を集めるようにして熱を集めた後、
そのまま髪を撫で一気に乾かした。
 いつまでも濡れたままでいるわけにもいかないと言うことと単
に面倒と言う理由である。
「そういうこともできるのか」
 そのローグの行動を意外そうに見つめながらシュヴァルツが呟
いたのでそれに笑顔で頷いておいた。
「別段珍しいことではないんだが、まぁ髪を普通に乾かすのが面倒
と感じる時とかに使うことがあると言う程度だな」
 何やら自分の無精をさらしている様な気がしなくもなかった
が、不思議そうに見てくるシュヴァルツの表情が幼い子供のよう
だったのでそう答えた。
 そのローグの言葉に最初こそ首を傾げるような仕草をしていた
が自分の呟きに対する説明だと気付き、カァと赤くすると更に深
く俯いてしまった。
 その仕草に年相応なものを見付更に笑みを深めた。
 だがそんな風に笑っていると知ったら不機嫌そうな表情になる
のは目に見えていたため、彼に背を向けた。
「街へ出る前に食堂へ朝食を食べに行くか」
 外はもう明るく人の行き交う時間になっており、そういうと首
だけを後ろに座るシュヴァルツに向けた。
 すると案の定彼は驚いたような表情でこちらを見ていた。龍人
族はあまり食事を必要としない。クリスティーアは知らなかった
ようだがそれは結構有名な話なのだ、幼い子供でも知っている程
には。
「昨日ちゃんと食べたんだが龍体になってしまってな、おかげで空
腹なんだ。龍体になると行動範囲や移動時間も短縮できていろい
ろ便利だが、こうも燃費が悪いというのも考えものだな」
 自分の体のことだけに苦笑してそう付け足すと仕草でクリス
ティーアを迎えに行ってくれるように指示したのだった。
 シュヴァルツもそれにすぐに従うと部屋を音もなく出て行っ
た。
 ローグはそれを見送ってから今日もまた波乱に満ちた1日にな
りそうだと頭を痛めた。

  
























SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送