朝風呂
 
 
 
 そんなこんなのすったもんだの末にどうにかクリスティーアを
ローグの上から降ろす事に成功した2人は、とりあえずローグが
風呂に入るからといって別にかまわないと言い張る彼女を無理矢
理追い出してやっと落ち着きを取り戻した。
 そしてやっと落ち着いて風呂に入ると昨日の戦闘で付いた血を
洗い落とした。此処に着てすぐに拭き取ったこともありそれほど
きつくこびり付いていた訳でもなく少し擦ればすぐに取れた。髪
には比較的付いておらず軽く洗えば元に戻ったので、髪や体に
残った泡を流すとゆっくりと湯船に浸かった。
「はぁ……。まさか朝から叫ぶ羽目になるとは……。………………
故郷が恋しくなってしまうのは何でだろうな……。まだ1日しか
たってないのに……。」
 湯に浸かったまま昨日の事を思い出し、旅の初めからいきなり
ホームシックに近いものになりつつあるローグは深く溜息をつい
た。
 そしてこれはこの後すぐに本当にホームシックになってしまう
のである……。
 そのまま湯に使って眠っただけでは取れなかった昨日の疲れを
落とすようにゆっくりとしていると、なぜか部屋のほうが騒がし
くどたばたとしている。それに声が2つ。1つはシュヴァルツ、
もう1つはあまり認めたくはないがそれは間違いなくクリス
ティーアのもので、何かあったのかと湯船から上がろうと腰を上
げるのと浴室の戸が勢いよくあけられるのは、間違いなく同時
だった。
「ロ〜グ〜? 何時まで入ってんの? それとも……あ、のぼせて
はなかったね。」
「………………………………(1分経過)………………………………
……。」
 こちらに何も尋ねずに入ってきたクリスティーアに、言うまで
もなくローグは僅かに腰を上げようとした姿勢で固まった。
 いくらなんでもローグもそれなりの歳である。結構……いや、
かなり厳しいものがあった。
「どしたの?」
 そんな固まって動かないローグに、やはりのぼせていたのかと
見当違いもいいところなことを考えながら入ってきてローグに顔
を覗き込むクリスティーアに、今度こそ、ローグは完全な、それ
こそ言葉にすらならない悲鳴をあげそうになったが、それはなけ
なしの理性でどうにか抑えると別の声を上げた。
「〜〜〜〜〜っツ! こ、くぉんの馬鹿者ーーーーっっ!! 男が
入ってる浴室に入ってくる女が居るかぁーーーっ! ちょっとは
恥じらいと言うものをしれぇっ!」
 本気で起こったローグはそう怒鳴るとクリスティーアにでてい
けっ! と怒鳴った。だが怒鳴られたからと言って出て行くよう
な彼女でもなく、嫌だというと服を着たまま湯船に入ってきた。
「〜〜〜っ!!? な、何で入ってくるんだ!!」
 突然の行動にローグは湯船の中で1番クリスティーアから離れ
た場所までいったが、そんな行動に僅かに首を傾げながらばしゃ
ばしゃと近よってくると、ローグの黒く長い髪を思い切り掴み
「え? その長い髪洗ってあげようと思って。」
 そう言ってしげしげと髪を眺めた。
「もう洗った!!」
「駄目だよ、ちゃんとリンスしてトリートメントしなきゃ。せっか
く綺麗な髪がぎすぎすになっちゃう」
 クリスティーアにすぐに反論をしたが、それにも解かるような
解からないような理由でそう言って有無を言わせずに腕を掴むと
湯船の床のあるほうへと引きずっていった。
「まぁ、入ったままでも言いからせめて頭だけは床の上に出して
ね。湯船に入ったか結構あれだし。マナー違反。だっけ? なん
でしょ?」
 そう言って反論をするよりも先に現実逃避をしてしまっている
ローグを端まで引きずっていったのだった。

  
























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