双龍の会話
 
 
 
 暫くの間睨み合いにも似た沈黙の後、不意にシュヴァルツは視線を
ローグから逸らした。
 ローグはどうしたことかと首を僅かにかしげシュヴァルツの行動を
見ていたが、それには何の返答もなくすっと立ち上がると、丁度ロー
グの正面の壁に歩いていきなぜかその壁を叩いた。
 すると隠し扉になっていたのかすっと壁が開いて1人の青年が出て
きた。
 あまりにも突然の事にどう反応していいのかもわからず目を白黒さ
せているとシュヴァルツは何事かを青年に伝え、再び青年は壁、もと
い扉の向こう側へと姿を消してしまった。
 そしてする事が終わったとでも言うように再びローグの前にもどり
座ると
「申し訳ありません。旅の同行を承諾いたします。」
 そう言いローグを見た。
 ローグはあまりにも早い展開に完全についていけずに硬直していた
が、再び名を呼ばれはたとなるとすぐに状況を理解した。
「あ、ああ。申し訳ない。少し驚いて……。
 旅の同行、承諾していただき有難く思います。」
 そう言うと、やっとシュヴァルツにも笑みが零れた。それは総帥と
して自分に接していたときよりもやや幼い印象を受ける笑みで、それ
が彼の本当の顔かもしれないと思いながら同様に緊張を解くと、ほっ
と息をこぼした。
 するとそれを見計らったように静かに鉄の扉の叩かれる音がして、
シュヴァルツがすぐに表情を引き締めると「入れ。」と声をかけた。
 その声に従うようにすっと1人の先程とは違う、今のローグよりも
やや年上だろう成人した雰囲気を持つ男性が入ってきた。シュヴァル
ツはその相手を見定めると、今度はしっかりと、「失礼します。」と
ローグに声をかけて立ち上がり男性の前に歩いていった。
 急に入ってきた相手に首を傾げ見ていると、その男性に何かをいい
指示を出しているのは解かったが、背を向けているために何を言って
いるのは解からなかった。
 すると相手はローグに1度視線を向けて深く会釈をして部屋を入っ
てきたのと同様にすっと出て行った。
 さっぱりと解からない展開に眉を寄せ考えるように手を口元に当て
ながら俯いていた。
 そのローグに気付いていないのか、静かにまたもとの位置に座りロ
ーグを見つめた。
「どうかされたか?」
 何かを考えているらしいローグの様子に気付いたのかそう尋ねてく
る彼にローグはすぐに顔を上げると
「いや、先程の方が誰かと思って……。」
 そう疑問を口にした。
 シュヴァルツもその言葉にすぐに頷くと「副官です。」と簡潔な答え
を返してきた。
 ローグもそれ以上の答えは望んでいないという事もあり頷いて礼を
言い言葉を止めた。相手が何かを言おうとしているような気がしたた
めだった。
「祭司殿、巫女姫殿は何処に? ここにはお1人で来られたとお聞き
していますが。」
 どうやら最初の方から気になっていたらしいことを尋ねてくる彼に
ローグは少し間を開けてから
「巫女姫は此処にくる途中で魔物に襲われた際に怪我を負ってな、そ
の治療で教団にいっている。今は、多分宿にいるはずだ。」
 そう説明した。重要部分が大きく省略されてはいるがいったい何と
戦ったのかはいまいちよくわからないので他に説明のしようもないの
も事実なのだ。
 それでもその説明にそうですか。というとこちらの状況は大体理解
してくれたらしくそれ以上の問いはなかった。
 ふと見ると空は赤くなりだしていてそろそろ帰ったほうがいいかと
思った。

  
























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