漆黒の堅牢
 
 
 
 一方ローグはクリスティーアが間違った方角に歩いているとも
知らずに騎士団本部に歩いていた。
 白緑色の街の中で薄い黒色の建物が目の前に見え出しローグは
僅かに歩調を速めた。
 その建物は先程までいた教団の本山とは趣が異なり威厳ある、
気高い造りだった。全体的に言えば堅牢な造りの窓が少なくもそ
れでいて堅苦しさのない建物となっていた。
 その建物の前に歩いていくと衛兵が歩いて来てローグの前で
持った槍を交差させた。
「何用か。」
「龍人族、大地の祭司・ローグ=クロノリア。星の記憶を解放する
旅を行うに当たり騎士団より護衛を派遣していただきたく参った。
 総帥にお目通り願いたい。」
 目の前にいる衛兵らにそう言うと、彼らは顔を見合わせた後槍
を退き胸を逸らすように姿勢を正すと
「申し訳ありません。どうぞ、お入りください。」
 といってその頑強な門を両側から開いた。
 ローグはそれに頷いて答えると堅牢な造りの建物の中に入って
いった。
 建物の中は黒で統一されていたが、それは漆黒の……というイ
メージではなく、むしろ人が落ち着く星夜のような、そんな雰囲
気だった。所々で光る壁に埋め込まれた石の光の反射がよりいっ
そうそれを強く意識させるのかもしれない。
 そんなことを想いながら奥へと進んでいく。教会の事はあまり
知らなかったが、この騎士団についてはよく知っている。
 すでに100年か200年は裕に経っていると思うのだが、彼はこ
こに数度足を運んだ経験がある。最も今は覚えている人間などい
ないのだが。
 そんなことを思いながら1番奥にある総司令室の前に立った。
 総司令室は他が木造のどこかまだ温か味のある造りであるのに
対し、
(くろがね)の重厚な、そして何者も寄せ付けない雰囲気を持つ造
りをした扉だった。
 その雰囲気に眼を細めると、そっと扉を叩いた。叩く度に手に
冷たい鉄の感触が伝わり、コンコンと金属特有の冷たい音が響い
た。
 そのまま少し待つと中から扉がゆっくりと重たげに開かれた。
 扉を開いたのは178ほどの黒髪に赤い瞳を持つどこか浮世離
れしたような雰囲気を持つ青年だった。
「連絡は受けておりました。どうぞ。」
 青年はローグの姿を確認するとそう言い体を後ろに引くと彼に
入るよう無言で促した。ローグもその促しに従い部屋の中に入っ
ていった。

  
























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