嵐の前の一騒動
 
 
 
 外に出て行ったクリスティーアにすぐに声が掛けられた。声を
かけた主は他でもない此処まで案内してくれたアスールだった。
「巫女姫様!」
 その呼びかけにクリスティーアは微妙な表情をしたが、彼には
その呼び方を嫌っているという事を伝えていないので仕方がない
と諦めた。
「何? どうしたの? ローグは?」
 何ゆえの呼びかけかもわからず、それと同時に彼とともにいた
筈の旅の同行者の姿がないことに気付いてそう問い掛けた。
 それに対してアスールは少し苦笑したような表情になった後
「お呼びしたのはその祭司様の事です。祭司様は5分ほど前にこ
こを出ていかれました。
 漆黒の騎士団に向かわれるそうですよ。巫女姫様には先に宿に
帰るようにと、伝言を承っています。」
 そう言うと頭を下げた。
 クリスティーアはその事に呆気にとられたような表情になった
後大きく1つ溜息をついた。
 本音を言えば今すぐにでも怒鳴り散らしたいところだが、そう
するわけにもいかず溜息でそれを押さえつけたものの、怒りは収
まりそうもなかった。それでもありったけの理性を自制心でそれを
治め、アスールに笑顔を向けた。これから確実に心労を溜め込む
事になるであろう相手にこんな事でストレスを与えるわけにはい
かなかった。一応、彼女にも多少の分別というものはあった。
 そしてアスールに笑顔を向け
「ありがとうアスール、私は宿に帰るわ。教皇様によろしくね。」
 そう言うと教会の外に出る扉に歩いていった。
 教会を出る扉の前に着くと1つ溜息をついて外に歩いていった。
ローグがいないことに腹は立ったものの、教皇と言う強力な仲間
が入ったのだ、それで良しとしなくてはならない。
 それにしても何故漆黒の騎士団にいく必要があるのだろう? 
更に仲間でも増やすつもりなのだろうか。だとすれば随分と大仰
な旅になるものだとクリスティーアは思うのだが、すでに自分達
の立場が大仰なものである事に気付いてないあたりが、愛嬌とい
えばそうなのだろうがそうだとしてもこれではローグの苦労が偲
ばれる。
 いくらなんでも巫女と司祭に蒼天の教団・教皇が同行している
という時点でそうだと思うし、彼らの旅は星の記憶を解放する旅。
すでにこの時点でどんな事も大仰にはならないような気がするも
のだ。
 クリスティーアはそれに首をかしげながら宿に対して正反対の
方向に曲がって歩いていった。それは明らかに間違った方向なの
だが、本人はそれに気付けないようだった。
 その間違った道を歩きながらクリスティーアは居間ローグがい
るであろう場所を思い描いていた。
「それにしても漆黒の騎士団かぁ。きっと強い奴が一杯いるんだろ
うなぁ、試合したいなぁ。勝負や喧嘩でもいいなぁ。」
 うっとりとそう呟くその様はまさしく美少女なのだが、言って
る内容はその外見に完全に反していた。

  
























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