巫女と教皇2
 
 
 
 急な事に思わず受けてしまったルクールドラメールだが、さす
がにこのまま何もせずに一緒に行くわけにも行かないと、まだ混
乱の極みにある頭を必死に回転させてどうにかそれだけを思うと
「で、では巫女姫さ……じゃない。クリスティーア様。とりあえ
ず、そのぉ……えーと……。
 私は一応立場あるものなので、すぐには同行できないので、
えっとぉ……とりあえず同行するのは
明後日(みょうごにち)からという事で
よろしいでしょう……か?」
 とどうにか詰まりつつも提案したのだった。
 2日あればどうにか業務のまとめや役割の分担、それに今の自
分の立場、つまりは教皇の代行者の選抜もできるだろう。
 限りなく強行軍の切り詰め業務ではあるだろうができなくはな
かった。半分は大体できるものも限られてくる。ましてや教皇の
代行者など、補佐をしている人間しかできないのだから、大丈夫
だろうとどうにか動き出した頭の内で考えた。
 そのルクールドラメールの言葉ににこりと笑うと
「もちろん、私は一緒に来てくれるなら時間がかかっても構わない
わ。それに多分、他の人じゃ私の傷って治せないと思うし。治せ
る人が来てくれるならそれでいいもの。
 それじゃよろしくね! ルクール!」
 そう答えて手を出した。
 ルクールドラメールもそのクリスティーアの言葉にほっとしたよ
うに笑みを浮かべるとその手を取った。
 だが取った後で気がついたのだが、自分以外では傷が治せないと
いうのはどういう意味なのだろうか。
「…………あの、クリスティーア様。つかぬ事をお尋ねしますが、
『他の方では傷が治せない。』とは……?」
 完全に口元を引きつらせながら尋ねた。
 その問いにクリスティーアはにこりと綺麗な笑みを浮かべると
とんでもない答えを返した。
「ああ、私ねすっごく特殊な体質なのよね、何でかしらないけどた
まに呪文跳ね返しちゃうの。その所為か回復系の呪文を跳ね返
すっていうか、効き難いのよね。だから私が住んでた町にも教会
があったんだけど、神官の人じゃ無理でいつも司祭様が30分以
上かけて治しくれてたのよ。」
 ふぅと溜息をつきながら笑っていうクリスティーアはまるっき
り困っていないような言い方だが、その内容からかなり苦労して
いる事はすぐに理解できた。
 傷を治しにくいということはそれだけ怪我をしたときのリスク
も上がるという事だ。それは同時に『死にやすい。』という事も
示していた。
 確かに先程の傷は彼女の力でも傷に対し治療に随分と時間がか
かったような気がした。それは見えないところにも傷があった
か、打撲があったのだろうと思っていたがそんな様子はなかった
事を考えると、そうだと言われた方が納得できた。
 だとすると彼女の退室を考えると他の司祭や司祭長を行かせて
も役にたたない可能性が高い、というよりも戦闘中で傷を治すの
が遅くては意味がないどころか足手まといになりかねない。
 ましてや地方の町といっても司祭クラスの人間が30分もかか
る事を考えると、ここにいる司祭長や高位神官でもまず、役には
断たないだろう。
 そう判断すると、すでに服を着始めていたクリスティーアをみ
やって
「ではクリスティーア様。明後日にお泊りになっている宿に向かわ
せていただきます。」
 というと彼女もその言葉に花が咲いたようなにこやかな笑みを
浮かべると
「うん。よろしくね。私は『香草華亭』って場所に止まってるから。
 あ、無理して早く来なくてもいいのよ? もう少しかかりそう
ならいってくれれば待つから、気にしないでね?」
 といって部屋から出て行った。
 ルクールドラメールはそのクリスティーアの言葉にきょとんと
した表情になってから、にこりと笑った。クリスティーアの気遣
いがうれしかったが、もちろんそうなるかも知れないと言うこと
を考えての明後日なので、それ以上遅くするつもりは毛頭なかっ
た。

  
























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