祭司の勘
 
 
 
 一方医療区を出たローグは隣りで一応だが、放心状態から戻っ
て恐ろしいほど落ち込んでいるアスールを痛ましげに見やった。
 ローグ自身いまだに精神的ダメージから抜けきれていないので、
何も声をかけることができないのが実情なのだが。
「アスール殿、その、気にするなとは流石にいえないが。…………
あの、こればかりはもうどうしようもない事なのだ。だから……
その、あまり、落ち込むな。」
 困惑した様子でそう言ったが、およそ慰めには程遠い言葉だっ
た。
 最も、それだけ彼も困惑しているのだろうが、それでも声を掛
けられただけマシかもしれなかった。普通の人間ならば、声をか
けることどころか、自分が立ち直りきれなかっただろうから。
「申し訳ありません、祭司様。一応、大丈夫です。その、一
応…………。」
 ローグの言葉にいまだに落ち込み気味ではあるものの、それで
もどうにか立ち直ってそう言うと、医療区から離れた。
 ローグもそのアスールの後を追うようについて歩いていくと、
隣りに行き
「その、すまないのだが、クリスティーア殿が出てきたら、先に宿
へ戻るように伝えてもらえまいか?」
 そう頼んだ。
 アスールの方は急なローグの頼みにきょとんとした表情で見返
した。
「待たれないのですか?」
「ああ、少々、騎士団に用事があってな。」
 アスールの言葉にそう短く答えると、1回深い溜息をついた。
 アスールはそのローグの反応に何かに気付いたのか、曖昧に笑
みを浮かべると
「騎士団ですか。確かに、今のような状況では、厳しいものがあり
ますものね。
 わかりました。巫女姫様にはそう伝えさせていただきます。お
気をつけて。」
 ローグの反応で大体の事は把握したアスールは苦笑してそう言
うとローグも「よろしくお願いする。」といい教会の門を外に向かっ
て出て行った。
 後ろでアスールが頭を下げ、門兵が祈りを捧げるような仕草を
している事を気配で感じながら、同時に何故か嫌な予感が胸の中
で大きく波紋を広げているのを感じた。
 そしてその嫌な予感の波紋が、これから僅か5分後に教皇・ルクー
ルドラメールの叫び声とともに現実になることを彼はまだ知らな
い。

  
























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