さらなる問題
 
 
 
 扉は意外にも他の場所のと比べ小さく、人が2人並んで入れる
かどうかといったところのものだった。
「へーやっぱ医者んとこねー。こう言うの見ると病院来たみたいで、
逃げたくなるわ。」
「…………………………………………。逃げるなよ?」
クリスティーアの言葉に数瞬止まった後、油の切れかけた機械の
ような動作で振り向き言うと、彼女はむっとした表情で「逃げない
わよ。」といって扉をそっと押し開いた。
「あ、お怪我ですね。こちらへどうぞ。」
 室内に入ってすぐに鮮やかな蒼い髪の少女がにこりと笑って椅
子を示した。ローグはその少女の普通以上に強い力にその正体を
知って、何故こんな場所に? と首をかしげていると
「…………教皇様、また此処に……。」
 そうアスールががくりと肩を落としそう呟いたのを聞いて、あ
あ、そういえばそんな事もいっていたなと1人納得した。
「じゃぁ、脱げばいいのね。」
 そんな風に立っていると急にクリスティーアがそう言い、男が
2人もいるのにもかかわらず、躊躇いもなく着ていたものを

ぎ捨てた
(・・・・・)
「っ!!ぅっわ――――――っっ!!」
 あまりにも急な展開について、いや、対応できなかった2人は
アスールの方が叫び、ローグは完全に思考を見事に停止していた。
 だがその原因となった当の本人は何故叫ぶのか問いたげに薄い
下着1枚の姿でこちらによって来ようとするのだから尚堪らな
い。ローグは慌てて手でそれ以上近寄る事を制すると
「そんな格好で近寄るな!! はしたないっ!」
 そう叫んだ。アスールの方はすでに失神1歩手前のような状態
だ。確かになれていないものにはきついかもしれない。
 だがそんな2人の様子に悪びれる風はなく、むしろ威張るよう
に胸を逸らせると
「何よ、別にいいじゃない。減るもんじゃなし。」
 と反論してきた。だがその内容にはなにやら間違いがあるよう
に思えるのだが。
「良くないっ! しかも、それは見た側の言い分であって、見られ
た側の台詞ではない!」
「あら、いうわよ! 見られた(・・・・)んじゃなくて、見せてる(・・・・)んだから。減
らないし、むしろ得じゃない!」
「そういう問題かぁ! むしろ、そういうのを屁理屈というのだ!! 
そなたはもっと恥じらいをもてっ! 一応とはいえ年頃の女だろ
う!!」
 最早混乱しているのは明らかで、言ってることがすでに可笑し
いところのあるローグだが、この様子だと本人も何を言っている
のか理解できていないようである。
 だが、確かにこのクリスティーアの態度では混乱するのはむし
ろ男の方であるのは頷ける。こうも威張られては立つ瀬もないこ
の場合、普通の反応はローグ達の方だろう。
 というよりもむしろ傷の治療の準備をしている彼女にこそ止め
て欲しいのだが。
「と、とにかく失礼する。」
 そう言うと、はっきりと紅くなった顔を背けて、今にも倒れて
しまいそうなアスールを支えて出て行ったのだった。
 ちなみに
「別にいてもいいのに。」
 というクリスティーアの呟きは、完全に無視された。

  
























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