教会への道
実を言うと教団へは少しでも早く行く必要はあったので、宿の
人物へ外出の旨を伝えて外に出ると一路教団本部へ向かって歩い
ていった。
「にしても本当に白緑色メインの街ね。綺麗だけど、場所がわかん
なくなっちゃいそう。」
街を見渡しながらそういうクリスティーアに少し苦笑すると、
彼女の血気の流れを見た。血そのものは止まったものもあるよう
だが、それでも足や腕などの傷は動くせいもあり塞がる前に開い
ているらしく、まだ流れる気配があった。
それを見て少し急いだ方がいいと判断すると、薄浅葱色の建物
を探し始めた。
「ん? ああ、クリスティーア殿、あそこだ。」
周りを見て薄い蒼色の建物を見つけ其処を指差し言うと、彼女
もそれにあわせてその建物を見て頷いた。意外と遠そうだった。
「そう言えばさ、ローグの名前ってやっぱあれ? 【クリスタル=
ローグ】の<ローグ>?」
教団を見つけ、そこに向かって歩こうとしていると突然そんな
これから行く場所とは全く関係のないことを尋ねてきたので、そ
れに対して少し怪訝そうな表情で見た。何でそんな事を聞くのか。
という意味も込めていたのだが、どうやら彼女には通じなかった
らしい。「ねぇ、どうなの?」と催促の言葉をかけてきた。
ローグはその事に少し諦め気味に溜息をつくと、
「そうだ。ローグという言葉は本来【封印】を意味するものだから
な。
そういうクリスティーア殿はどうなんだ?」
そう答えて、返すように同様に名前の事を尋ねた。
クリスティーアはそれにきょとんとした表情をしてからにこり
と笑って
「私? 私はね、クリスが<クリスタル>を略したので、ティーア
はそのまんま<ティア>をちょっと変えたものよ。
だから、【水晶の護人】って意味になんのよね。やっぱクリス
タル=ローグからとったんだって。」
と答えた。
ローグはその答えにやはりかとも思ったが、あえて口にはせず
にクリスティーアの言葉の続きを待った。なにやらまだ話が続き
そうな気配なのだ。
「でもさー、クリスタル=ローグから名前とる親もいい度胸してる
わよねー。一応呪いでしょ? これ。」
「ああ。そうだ。」
「それにさー、<クリスティーア>ってするんならむしろ<クリス
ティア>の方がいいじゃない。」
「そうだな……。は?」
彼女の言葉を半ば聞き流していたローグは急に変わった話題に
生返事をした後眼を丸くして聞き返した。
だがクリスティーアはそんなローグの反応をよそに更に話しを
1人で進めていく
「だってさー、クリスティーアもいいけど、やっぱクリスティアの
ほうがかっこいいじゃない。何でティーアなのかなぁ。響きは綺
麗だと思うけどさ。
ねぇ、ローグは<ローグ>って名前、気にいってんの?」
散々文句を行った後、すっきりしたとでも言わんばかりに今度
はローグへと話題が急に移され僅かに驚いてから、どうだったろ
うか。と自分の名前について考えた。
「どちらかといわれれば気に入っている。父と母がつけてくれたも
のだ。文句を言う必要もない。」
そう答えた。
一応嘘はいっていないし、本心なのでこれでいいと思っていた
のだが、どうやらクリスティーアの方は納得できなかったらしく
不満そうな表情で口を開こうとしていた。なのでそれよりも早く
「この角を曲がると教団の正面に出るはずだ。」
そう言い、薄黄緑の薬屋の横から延びる大通りへと体を向ける
と、其処には確かに薄い蒼色の荘厳な教会が立っていた。
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