ラベンダーの宿にて
 
 
 
 その宿は淡いラベンダー色の壁紙に蒼い文字で『香草華亭』と
書かれていた。よく見ると下のほうが−この町にしては珍しい−
鮮やかな鮮やかな緑で草が描かれているから、名のとおりラベン
ダーを模しているようだった。
「いらっしゃいませ。お泊りですか?」
 宿に入るとすぐに声が掛けられそれに頷くと、ローグがシング
ルを2部屋と伝えた。血塗れの姿なのに受付のこの少女が驚く様
子を見せないのは、慣れているからだろうと解釈した。もし本当
にそうなら、かなり嫌な感じはするのだが……。
「2部屋ですね。かしこまりました。
 あ、それとお怪我をなさっているようですが、教団の方へ連絡
いたしましょうか?」
 ニコニコと笑いながら尋ねてくる少女に教団へは自分達で行く
のでかまわない。と伝えあてがわれた部屋へ向かった。
 あてがわれた部屋の前でクリスティーアとわかれて部屋に入っ
た。部屋の中はやはり外装と同じく柔らかなパステルトーンで纏
められていて、ベットや机など、生活に必要最低限のものは揃っ
ていた。シーツはパステルブルーだった。
 窓の外は綺麗な白緑色の街並が広がる、なかなかの眺めだった。
「ローグ? 入るわよぉ。」
 あてがわれた部屋で血塗れの服を脱ぎ、まだ汚れていない服を
着る前に体についた血を拭っていると、クリスティーアが声と共
に入ってきた。
「あ、着替えてた? ごめんね。」
 静止や了承の声よりも先に、それも確認の声と共に入ってきて
は聞いた意味がないだろう。と思いながら溜息をつくと、今の状
況で出て行かずにベットに腰を降ろして居座ってしまったクリス
ティーアを見やり
「何か用があるのか? 教団にはすぐに行くぞ?」
 残りの血を手早く拭うと新しい服に袖を通しながら尋ねた。
 だがクリスティーアはそれを聞いていなかったのかごく普通に
「もう怪我ないねー。すごい回復力ね。
 ……でも私より筋肉なくてほそっちいね。」
「ほっとけっ!
 それよりも私の問いに答えろ!」
 完全にローグの問いを無視して、その挙句に何気に気にしてい
ることを言われ思わず怒鳴りつけたい衝動を押さえながら再度聞
きなおした。
「うん。教団に行くのに迎えにきた。」
「……………………そうか。」
 あっけらかんとした彼女の答えに脱力した様子で項垂れながら
答えた。
 新しい服を完全に着込むとクリスティーアに立つように促した。
「んじゃ、いこっか。
 あ、言っとくけど、私教団の場所知らないから。」
 立つように促されて立ち上がるとうーん。と伸びをしながらそ
う言った。
 ローグはその彼女の言葉の後についてはなんとなくだが承知し
ていたようで、特に変化もなく「解かっている。」と答えて部屋の外
に歩いていった。

  
























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