翡翠の街へ
 
 
 
第三門:守護者達の街・サティーティア
 
 サティーティアの近くの草原にそっと着陸したローグはしばら
くの間その場にじっとして背に乗っている少女を寝かせていたが、
流石に日も傾き始めてきたのでそっと体を揺らしてクリスティー
アを起こした。
『クリスティーア殿、着いたぞ。』
 軽く揺すった程度では起きそうもない彼女にそう声をかけると、
彼女は少しうーんと身じろいだ後、むくりと起き上がった。
「ん……? 着いたの?
 ……ふぁ〜〜。よくねたぁ。ありがとね、ローグ。」
 周囲を見て着いたことを確認すると、1回欠伸をしながら伸び
をしてローグに礼をいいながら彼の背から飛び降りたのだった。
その際に彼女の着地を保護するように風を起こすことも忘れては
いなかった。クリスティーアはそのことにまた笑顔で礼を言った。
 ローグは彼女が降りたのを見てから、またすぐに人の姿へと外
見を変えた。
 人の姿になるとローグはその長い、最初は高く括られていたは
ずの、今は解けて広がってしまっている黒鋼の髪をうっとおしげ
に後ろに払いながらクリスティーアの側によっていった。
「……括ってたのに何で解けてるの?」
「………………龍の姿になると必ずこうなる。一応、(たてがみ)だから
な。」
 そうクリスティーアの言葉に諦め気味に言うと、自分の荷の中
から紐を取り出し首のすぐ後ろで1つに纏めた。どうやら上に上
げるのが面倒らしい。
 そうやって髪を括ると自分の荷と彼女の荷を持って少し離れた
場所に見えるサティーティアの城門へと歩いていったのだった。
「にしてもさぁ、サティーティアって何で白緑色(うすみどりいろ)なの? 他に
も色ってありそうじゃない。」
 目の前に広がる外壁と僅かにその先を見せる見張り塔らしき塔
の屋根を見詰めながら、直な疑問を口にするクリスティーアを一
瞥して外門の前にたった。
 すると門兵が出てきて儀礼的な挨拶をすると、何も言わずに
−ついでに聞かずに−その重厚な門を開けてくれた。どうやら遠
めに
ローグ()の姿を見てくるということを察して
いたらしい。龍は元々人間の守護者だから裏切ることもないので
当然の対処なのだろう。結構時間が経っていたのにもかかわらず
見ているだけというのもどうかとは思うが。
 重厚な門を抜けるとそこには、外壁と同様に白緑色を中心に穏
やかなパステルカラーでまとめられた、活気のある街並が広がっ
ていた。
「サティーティアは、【翡翠(ひすい)護人(もりびと)】と言う意味を持つ古代語が語
源と聞く。白緑色がなのはおそらくそのためだろう。
 街並を珍しそうに眺めるクリスティーアにそう先程の疑問の答
えを説明すると、軽く周りを見渡し宿を探し始めた。
「へぇ、翡翠の護人かぁ。綺麗な言葉ね。私の゛ティーア゛も護人
意味持ってるけど、そっちのほうがよかったぁ。」
 ローグの説明に楽しげに頷くと彼と同じように宿を探した。最
もローグは彼女の言葉を少し怪訝そうに聞いてもいたようだが、
何も口にはしなかった。
 流石に血まみれで街を歩きつづけるわけには行かない、ただで
さえ視線が痛いのに……。
「あ、あった! あそこにしよ!」
 周りを見ていたクリスティーアがローグの腕をつかんで1件の
宿を指差した。
 ローグもその宿を見ると同意するように頷いた。

  
























SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送