青年の提案と少女の意地
 
 
 
 ローグは短い付き合いながらも珍しい彼女の落ち込んだ声に訝
しげに眉を寄せながら見つめて、次の言葉を待った。
「だってね、こうやって、怪我とかしてさ、それが2人ともすっご
い重傷とかだったりしたら、助からないしね。私、回復系の力、
無いし、龍人族にはもともとそういう力、ないでしょ? それに、
薬だっていつも有るなんて限らないし、それ考えたらやっぱりね。」
 ローグもクリスティーアの言葉に何も言うことなく頷くと
「それに関しては私も思っていた。そなたの能力の有無に関わらず、
サティーティアでは教団に行くつもりでいたのだ。付いたら、1
度は宿で休んでから教団へいこう。共に来てくれる者がいると思
う。」
 そう意思を伝えたのだった。
 クリスティーアもローグの言葉に反論も無く素直に頷いた。
 ローグはその彼女の態度に更に強く眉を寄せて、そっと後ろに
下がり間を開けると立ち上がった。そのときまだ完全に癒えてい
ない傷に痛みが走ったが少し顔を歪ませせただけで、そのためク
リスティーアは気付くこと無く俯きつづけた。
「とにかく急ごう。…………立てるか? 足は……大丈夫ではなか
ろう? 私の傷はもう無いから、抱えていこうか?」
 1番傷が多いのがわかる足のみならず、全身に見られる傷が有
ることを示す赤い『血気』を見て、傷がかなりの数に及ぶと判断
してそう尋ねたのだ。
 だがクリスティーアはそのローグの言葉にきっと睨み上げると
「必要ないわよ! そんなに弱くないし、細いあなたに抱えられた
くは無いわ!」
(女に抱えられた男の私の立場は……?)
 クリスティーアの言葉に思わず内心でそう突っ込んだが、言っ
たところで意味は無いとどこか諦め気味の溜息を吐きながら思い
口にはしなかった。
 とにもかくにも今のこの状態の彼女を歩かせるわけにも行かず
どうしようかと思っていると、無理にクリスティーアが立ち上が
ろうとしているのに気づき慌てて肩を押さえて座らせると、大き
な溜息を1つ吐いて
「人の姿で歩いていては時間が掛かりすぎるし、抱えられるのが嫌
なのだろう? 多少、街の住人を驚かすやも知れぬが、龍の姿で
飛ぼう。其方の方が幾等か安全だ。」
 というと彼女も少し考えて、それなら。と了承したのだった。
 だがそのとき、一応とでも言うように一言、街の外に降りよう
といってきたので、それは当然なのではと思いながら頷いて答え
ると、一気に姿を変える準備に入った。

  
























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