1つ1つ知識を受ける
 
 
 
 長く叫びつづけた為か肩で息をするローグに彼女はしゃがみ込
んで彼の肩をさすると
「ローグって体力無いの? か弱いの? 大丈夫?」
 と尋ねてきた。
 ローグは最早言い返す気力もなくなってしまったらしく、無言
で肩を落として諦めたように溜息をついた。それが彼女の勘違いに
拍車をかける結果に繋がるのは言うまでもない。
 だが、ローグとしては龍人として1つだけ訂正しなくてはいけ
ない場所があり、呆れてものを言うのも億劫になっている口を開
くと、
1人納得しきっている彼女に
「クリスティーア殿、私は龍人だ。確かに一族の枠組みで言えば体力
は無いに近い立場だが、弱くはないし、人間に比べればずっと頑
丈だ。」
 と一応言葉をかけた。
 クリスティーアはその言葉にきょとんとした表情で、そうな
の? といってきた。ローグはそれに頷いて答えると、息が整った
ところで立ち上がった。と言うか、このままだと別の理由で疲れ
そうだったので進むことを選んだのだ。
「行くぞ。とりあえずここで何時までも止まっているわけにはいか
ん。」
 そういって、左右を見てからこれから向かう街の方へと足を運
んでいったのだった。
 クリスティーアもそれにしたがうように立ち上がると彼の横を
楽しそうに付いて行った。
「ね、ね、ローグ。これから行く街ってどんな街なの??」
 隣りを歩くローグにクリスティーアが楽しげに尋ねた。
「知らないのか?」
 まるで未知のものをみるように逆に尋ね返す彼にクリスティー
アは少し頬を脹らませると
「行ったこと、ないもん。私まだ成人してないし、周りの大人は、
そんなこと教えてくれないし。」
 そう返してきたのだった。
 それにローグはああ、人間はそんな決め事をしていたな。と1
つ頷いて納得したが、そうすると彼女はある意味、違反者なので
は? と言う考えも過ぎった。だが、それはあえてとわないこと
にした。龍人である自分には意味の無いことだし、今は違反では
ないと判断したのだ。
 そして、自分の中の記憶にある知識を思い出した。
「サティーティアは守護都市と呼ばれていてな、自警組織である
『漆黒の騎士団』と『蒼天の教団』の総本部のある街なんだ。」
 そう隣りを歩くクリスティーアに説明すると、彼女はしきりに頷
いて先を促した。ローグはそれに少し苦笑すると続きを話し出し
た。
「色は全体的に薄い碧で纏められていて、騎士団と教団の黒と蒼も
他の街と比べる必要も無いほどに薄くされていて、美しい街だぞ。
治安も良いし、明るくて良い所だ。」
「へー。哀惜の封地がある町だって聞いてたからもっと暗いのかと
思ってたわ。明るくて良い街なのね。」
 彼の説明に驚いたように素直な感想を言う彼女に、ローグは
ちょっとだけ笑ってから
「何もその封地が在るからといってその封地と似たような場所であ
ると言うわけではない。それの在る街と言うのはつまり、封地に
最も近い中継点のような場所と言う意味なのだ。」
 そう説明した。
 クリスティーアはそれに更に驚いたように瞳を大きく開き「へー、
そうなんだぁ。」と新しい知識を得られて嬉しそうにはしゃいだ。
 そんな彼女にローグは呆れて小さく溜息をつき隣りを歩いて
いった。ここまで知識の無いものと行かねばならないのかと思う
とちょっと先が思い遣られなくも無い。
 そうやってクリスティーアがローグに問い、それに彼が答える
ということを繰り返していると、頭上から木が倒れるとき特有の
音が聞こえ、2人は咄嗟に上を見上げ、次の瞬間には前と後ろへ
とその場から飛び退いていた。

  

























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