まず目指す場所へ
 
 
 
第二門:道中
 
 ほんの僅かな風が吹くだけでもさわさわと音のする森の中でクリ
スティーアとローグは黙々とサティーティアを目指していた。
いや、もくもくというよりはクリスティーアが1人延々と愚痴を
零しつづけていた。
「にしても鬱陶しいわねー。」
「森の中って割に日の光が差すお陰で暗くないけど。」
「あーもー。さむーい。」
「いつんなったらまともな道に出られるのよー。」
「……………………クリスティーア殿。」
 延々と続くクリスティーアの愚痴にローグも流石に呆れてきた
のか重い口を開いた。
 そのローグからの呼びかけにクリスティーアはなに? と振り
返ってきた。愚痴を言っている割にその表情は笑みで、現状を楽し
んでいるような節さえあった。
「この坂を降りるとすぐに道に出るが。」
 彼女の表情を怪訝そうに見つめながら隣りにある坂を指差した。
その下には確かに舗装された道が通っていた。
 そのローグの指した場所を見てクリスティーアは満面の笑みに
なると、彼の腕を掴み
「なら、速い方が良いわね。早速降りましょうか。」
 というなり、そのまま坂へとローグを()()担いで(・・・)降りていっ
た。
「なっ!? うわぁーっっ!?」
 急なことにローグは思考がついていけず、坂を文字通り駆け下
りる彼女の肩に担がれたまま短い叫び声を上げたのだった。
 そしてものの数秒で道まで降りると、クリスティーアは半ば放
心状態のローグを地面に降ろした。
 ローグは地面に足がついたことへの安心感からかその場に腰を
つけて、少し間を開けて真っ赤になった。
 地面に降ろすなり座り込んで、顔を真っ赤にしたローグをクリ
スティーアは不思議そうに見つめた。
「なに? どうしたの?」
 座り込んだまま動こうとしないローグに声を掛けると、彼はぴ
くりと反応を返してからあるで地獄の底からでも響くような声で
「どうしたのだと……?」
 と呟いた。
 その余りにも低い声にもクリスティーアは怯えた様子1つみせ
ずに首を女の子らしく傾げた。
「どうしたもこうしたも無いように思えるのは私のみか?
 急に肩に担がれたかと思えば次の瞬間には坂を駆け下り、しか
も担いできた相手は女だぞ……。」
 怒りや悲しみがない混ぜになったようなローグの言葉にも、ク
リスティーアはやはり意味が解からないというように首を傾げた
まま何かを考え始めた。
 そして何かに思い至ったのか両手をぽんと合わせて
「あ、大丈夫よ。あなた軽かった(・・・・)から!」
「そういう問題ではない!」
 完璧に的から外れきった発言にローグは勢いに任せてつっこん
だ。
 だがクリスティーアはそれで更に勘違いをすると
「腰抜けたんなら私が担いでいこうか?」
「却下。というよりも問題外だ!」
 そうとんでもない事を言われまた間髪いれずに突っ込むと、ク
リスティーアは首を傾げ一番ありえない勘違いをした。
「え? 何で? ローグって女じゃないの?」
「んな訳あるか! 祭司になれるのは男だけだ!
 というよりもどこをどうやればそんな結論に辿り着くんだ!!」
 この世で最もありえない事であり、同時にかなりショックな問
いに今までで1番強く言い返した。
 だがクリスティーアは全て聞き流すと
「だって私でも持ち上げられるくらい軽いし、髪長いし、美人だし、
細いし、色っぽいって言うか、艶っぽいし。」
「んな評価いらぬ!!
 というよりも男にそれはなかろうが!! 侮辱同然だぞ!」
 とクリスティーアの言葉に今度こそ本気で切れると早口に捲く
し立てた。
 実際彼女のローグに対する評価は男に対してするものとは間違
いまくったものだったので、彼の反応も頷けるものだった。

  
























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