服屋前
 
 
 
 なにやら勝手に決まってしまったような感じがしないでもな
かったが、とりあえず購入に同意したのだからと苦笑気味にまだ
自分の刻兎に髪を引っ張られているケルトを見つめながら、この
ままではケルトの髪が抜けてしまうかもしれないといまだに金の
髪を引っ張り続ける刻兎をなだめるように撫でて
「痛かったんですよねぇ、でも、ケルトさんも痛いと思いますから
それぐらいでやめてあげてくださいねー」
 とまるで小さな子供をあやすようにいうと、納得したのか気が
済んだのかはよく解らないが髪を引っ張るのをやめた。
 ケルトはそのことに安堵したのかほっとため息をついていた、
その姿にクロノスは笑みを浮かべると
「次から落とさないようにしてあげてくださいよ? またとめられ
る保証はないんですからね」
 そう一応の釘をさしておいた。
 その言葉にケルトからは「善処します」という言葉が返ってきてま
た笑みを深めたのだった。
「あの、やっぱり僕の服も……?」
「買うよ? 何で?」
 恐る恐るとった感じで尋ねてくるボリスの言葉にケルトはあっ
さりと最後まで言わせることなく答えてきて、その表所は何当た
り前のことを聞いてるのだとでも言わんばかりに不思議そうだっ
た。
 だがその答えにボリスは複雑そうに表情をゆがめたところを見
ると、どうやらケルトに買ってもらうということが気になるらし
い。
「何でそんな複雑そうな表情するかなぁ」
 複雑そうに表情をゆがめるボリスを見てケルトはばつが悪そう
な苦笑いを見せてそう呟くが、その声は問題の青年には届くこと
なく虚空に消えて知った。
「まぁ、これからのことを考えれば服は必要ですし、いいです
か……」
 少しの間を空けてボリスは何か吹っ切れたように顔を上げると
そう呟いた。どうやら問題は自己完結したらしい。
「誰かが時には居直りも必要といってましたしっ」
 それが自己完結の理由らしい。変わった理由だとは誰もが思う
が本人が納得しているのならばそれでいいかということで、
2人も
特に何も言わなかったのだった。
 そのまま納得したボリスと共に街の中を歩いていると、どう
思ったのかじぃっとボリスがクロノスの顔を凝視し始めた。その
視線は見ているというよりも観察しているような見定めているよ
うな視線で、クロノスの顔から何かを見つけようとしているよう
だった。
 だが正面を向いているクロノスにはそのボリスの行動は見えて
おらず、その後もしばらくの間そのままに歩き続けられていた。
「? ボリスさん、どうしたの? クロノスさんの顔に何かついて
るの」
 ふとボリスのほうを見上げたケルトがクロノスの顔を凝視する
ボリスに気がつきそう声をかけてきた。その言葉でクロノスもボ
リスがずっと自分の顔を見ていることを知りどうしたのかという
ように首をかしげながらそちらを見た。
「クロノス君て、女の子みたいですよね? なんていうか、顔立ち
もですけど、雰囲気とかも」
 先ほどからずっと考えていたのかそううーんと唸るように言っ
てきたので、クロノスは微苦笑を浮かべて
「そうですか? これでも気にしてるんですけどね」
「あ、すいません。あの、変な意味ではなくて、花があるというか
そういう意味です」
 やや沈んだ感じがするクロノスの声に慌ててそう弁解すると「な
んていえばいいんだろう?」と頭を抱え込んでしまった。
「そうですよね。クロノスさんって花があるって言うか人の眼を惹
きつけやすいですよね」
 ケルトもボリスの言葉に同意するように言うと
「もうすぐ服屋だよ。ほらあそこ」
 そう話はもう終わりというように言うと一軒の店を指差し立ち
止まった。
 ちなみにそういって示された店は、かなり広い、大型店であっ
たことをここに明記しておこう。

  
























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