不可思議な宝石
 
 
 
 何となくケルトに流されてしまったような気がしなくもないが
諦めてワゴンらしき台の中にある様々な石を見ていると、ふと、
蒼い白味を帯びた石に目がとまった。
 その宝石の名前は知らないが何となく惹かれて手にとって見る
と、ボリスの向こう側からケルトがこちらを覗きこんできており
「それを買うのー?」
 と声を掛けてきた。
 クロノスはそのケルトの言葉にしばらく考えると
「うーん、まだ見たばかりですし、もう少し見てから決めようと思
います。」
 そう言って手の中にあるその石を眺めつづけてみた。
「クロノスさんって、宝石が似合うタイプだよね〜。華があるって
言うか何ていうかさ」
 宝石を持ったクロノスを横から眺めているケルトが突然そんな
事を言ってきたので、彼は驚いたよう其方を見ると
「それって、僕が女顔っていってるのと同じですよ?」
 そう膨れ面をわざとして見せたのだった。
 ケルトのほうもケルトのほうでまさかそう返されるとは思わな
かったのだろう慌てたように手を横の大きく振ると
「そうじゃない! そう言う意味でいったんじゃないってば。」
「じゃぁどういう意味ですか」
「宝石にも見劣りしない雰囲気みたいなの持ってるってこと!」
 不服そうな演技に焦ったのだろうそう言ってきたケルトに、ク
ロノスはちょっとだけ目を見開いてから
「そういうのはケルトさんのほうじゃないですか? 僕は絶対に負
けると思います」
「「いえ、見劣りなんてしませんよ」」
 クロノスの言葉に2人が同時にいってきたので、クロノスは吃
驚と言うように眼を見開いてしまったのだった。
 そうやって言い合っているうちに呼ばれた店主が奥からゆっく
りとでてきたのに気付いた。
「あ、店主さんですか?」
「そうだが?」
 でてきたその男性に対しケルトはにこりと笑いながら尋ねたが
店主はかなり無愛想に頷くばかりだった。
「あの、此処にあるやつってパワーストーンですよね? 他にもあ
るんですか?」
 ケルトはその店主の無愛想さにも対し別にしていないとでも言
うようにそう言うと、首を傾げて周囲を見た。
 店主のほうはそのケルトの言葉に少し考えるように同じように
視線をめぐらせると
「身に付けるものも含め、今売りに出せるようなやつは此処にある
ので全部だ」
 そう言ってきたのでケルトはそうなのかと思いながらやや高め
のワゴンの中を覗き込んでいたのだった。
 そんなケルトと店主の会話を聞きながら、なんとなくだが品数
が少ないような気もした。
「品数が少ないのでしょうか?」
「あ、いや、どうやらここにあるのは店主さんが自分で採掘してき
たものを売ってるらしいから、数が少ないのはそのせいじゃない
かなと」
 クロノスの小さな呟きにすぐにボリスがそう言葉を返した。
 クロノスはそのボリスの言葉にああ、なるほどと納得した。確
かにそのようなことをしていれば商品は比例して数が少なくな
る。どうやっても自分が探す以上は自分の納得できるものしか売
りたくないと思うのが、こういう商売をしている人間の本質だ
と、以前何かの番組か何かで言っていたように思う。
(こだわ)品ということですかぁ」
 手に持っているいくつかの石をしげしげと眺めながらそう呟い
た。
 そういう拘りを持ってのものだと思うと選ぶほうもやはりしっ
かりと選びたいと思うのは真理というものなのだろうか、しっか
りと選んでいった。
 だが、もともとこういう系統は身につけない性格ということも
あり、あまり華美なものは欲しくないし数を買うというわけでも
ないので、結局考えた末に先ほど気になったものと同じ石のつい
たブレスレットだけを買うことに決めたのだった。
「ケルトさん、これでいいです」
 自分が選んだものに納得してからそうボリスのさらに向こうに
いるケルトにそういうとけるとはすぐにこちらを見てクロノスの
示したものを見ると、なにやら微妙な表情をしたのだった。
「え? それにネックレスとブレスレットだけなんですか? ピア
スも選ぼうよ」
 どうしたのかと思っていると、そういってきた。
 そのケルトの言葉にでも穴開けてないと抗議をしたが聞いても
らえず、まぁ、イヤリングならと思い結局選ぶことに決めたの
だった。場合によっては穴を開けるのもありかと、両親にもらっ
た体に傷をつけるのは気が引けたがそう思ってみたりもしたの
だった。

  
























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