蒼の青年
 
 
 
 ケルトもその言葉に眉を寄せてその青年を見たが、確かに外傷ら
しい外傷はなく、何かの衝撃で意識を失っているのみらしかった。
「にしてもどうしてこんな場所に…。」
 暫く心配そうに見詰めていたクロノスがそう、先程まで青年が倒
れていた場所を見て呟いた。
 倒れていたと言うことに関しては彼自身も大したことはいえない
のだが、やはり気になることではあった。
 ケルトもそのことについては同意見らしく頷くと
「本当に、どうしてかなぁ。」
 そう言ったのだった。
 クロノスはそのケルトの言葉にまた心配そうな表情になってから
また川を見て、ふと何かに気付きケルトの服に視線を向けた。
 彼の服を先程この青年を岸に上げるときに川に入ったためズボン
と服の下のほうが完全に濡れ、重く湿っていた。
「ケルトさん、服濡れちゃいましたね。ごめんなさい。本当は僕が
入るべきだったんですよね。
 そうだ、その岩の上で乾かしたらどうです?」
 ケルトの服の状態を見てそう言うと、困惑するケルトを押して横
の岩の上に昇らせたのだった。
 ケルトを岩の上に上らせた後、クロノスは少し考えるようにして
青年を見詰めた。
「クロノスさん? どうかしたの?」
 急に青年を見つめ美どうだにしなくなったクロノスに、岩の上か
ら身軽に飛び降りながらたずねるケルトに、彼は岩の上に上げた意
味がないなぁという意味もこめて微苦笑を向けると
「なんでもないです。
 ただ、珍しい色の髪だなぁと思いまして。
ほら、青っぽいけど、
よく見ると紫なんです。」
 そう答えを返した。
 ケルトはそのクロノスの言葉に意外そうな表情をしてその青年の
髪に視線を落とした。青年の髪は確かに青というよりは青味を帯び
た紫の色をしていて、ケルトが知る限りでもかなり珍しいに分類さ
れる色だった。
「本当だ珍しい色。
 でも、本当に誰だろ? どっかで見たことあるような気がするん
だけどなぁ。」
 はて? と首をかしげながら小さく口にして考え込んだ。確かに
会った経験こそないが、どこかで見かけたような気がするのだ。も
しかしたら父なら知っているかもしれないと思って青年を改めてみ
た。
「そういえば、天空領の民の方って空に似た色の髪が多いって機能
読んだ本にあったんです。本当だったらきっとこんな色の髪なんで
しょうね。」
 ふと思いついたように上を見上げて呟いた。
 ケルトの方はへ? と言う少々間の抜けたような表情でクロノス
を見た後、何かを思い出そうとするように首を傾げて考え子でしまっ
た。
 クロノスは急に考え込んでしまったケルトにきょとんとした表情
で首を傾げた。なんとなく呟いたことで何でそんなに考え込むのだ
ろう。というのが正直な感想だった。
「あの、どうしました? なんか、変なこといいました? 僕。」
 何で考えているのか解からず首を傾げえ尋ねてみたが、それにも
反応は返ってこず、ずっと考え込んでいるままだった。考え込むと
言うよりも思い出そうと必死なのかもしれないが。
 そのケルトの様子に流石に困ったように苦笑したクロノスはやっ
と、青年の服が濡れたままではないかと言うことに気付いた。ケル
トのほうには気付いたのに完全に忘れていた。
 まだ濡れたままなら確実に体を壊すから乾かさないと。と青年に
服の肩の部分に手を伸ばしてみたが、そこは意外にも濡れておらず、
1番長く川に浸かっていた足なども見た感じでは濡れている気配は
なかった。それもまるで川に流れていたと言う事実はなかったと言
うように。その中でただ髪だけが先程まで川にいたことを示すよう
に濡れていた。
 頭以外は濡れていないと知り少しほっとすると、今だこちらの行
動にも気付かないほど深く考え込んでいるケルトを見た。
「一体何を考えているんですか? ケルトさん。」
 いつまでたっても反応のないケルトに眉を寄せて声をかけるが反
応もなく動く気配すらなかった。
「ケルトさん? ケルトさんってばっ!」
 ケルトの態度にますます眉を寄せ、強く肩をつかんで揺すってみ
ると。
「う…ん。んぅ……。くぅ。」
 そう唸って体をひねりながらクロノスの手から体を避けた。どう
やら考え込んでいるうちに寝入ってしまったらしい。
 クロノスはそのケルトの状態に唖然とした様子で口をあけて見詰
めた。
「…あー。寝て…ます?」
 困ったようにそう呟くと弱ったなぁ。と言うように上を見た。ケ
ルトは寝ていて、青年も意識を取り戻す気配はない。まさしくお手
上げ状態だった。
「うっ…ん…
 …………ここ…は?」

  
























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